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3.データマネジメントの現状とストレージソリューションへの期待

3.1.データマネジメントの現状

3.1.3.中京大におけるコンピュータ演習用ストレージシステムの特徴

3.1.3.5.現状の課題

 ここでは、2章で定義されたデータマネジメントにおける8カテゴリに則って、中京大理系学部コンピュータ演習室で運用されているストレージシステムの現状の課題について述べる。なお、大学のコンピュータ演習室の主なユーザは学生であるが、通常の講義だけでなく課題提出や卒業研究等でも利用されるため、ユーザとして教員も考慮しなければならない。
 大学のコンピュータ演習室用ストレージシステムでは、特に(1)と(4)が重要な課題と考えられる。

(1)データプロテクション

    大学では、ユーザの多くが学生であり、ほぼ4年で入れ替わっていく。在学期間中の4年間は課題提出や卒業論文作成等で学生はファイルサーバを頻繁に利用するため、基本的に毎日バックアップを行っている。学生が卒業した後は、保存用バックアップを取った後、ストレージシステム上から削除される。近年、卒業後に必要なファイルを閲覧したいという要望が寄せられることが多くなり、その都度手動でテンポラリ領域へリカバリしファイルを探索しているが、大きなシステムを必要とせずテープから必要なファイルを容易に探索できると良い。また、1年間のスパンで考えてみると、講義期間中(春学期、秋学期)は多くの利用があるが、休暇期間中(特に夏季、春季休暇)は、研究用途を除いてストレージシステムはほとんど利用されない。このことから、バックアップの頻度や範囲を運用に合わせて調整することが可能である。これまでは人的な操作により調整しているが、システムの稼動状況を監視しながらバックアップ頻度・範囲の調整を自動化できると良い。
(2)アーカイブ・HSM
    前述の(1)データプロテクションにおける課題を実現するために、アーカイブ、HSMが可能なシステムを導入することも検討されているが、現状のストレージシステムでは、導入および運用コストの都合で導入されていないのが現状である。
(3)ストレージ管理
    講義期間中は多くの講義で利用され、特に、期末に集中する課題提出については学生の成績に影響するため、ユーザが期限内に確実に提示・提出(指定領域に保存・移動)できることを保証するストレージシステムが必要である。そのため、ストレージシステムには高可用性が求められる。一方、休暇期間中は自習用設備を除いてコンピュータ演習室を閉鎖し比較的自由にメンテナンス作業することができる。 RAIDの構成変更等、停止時間を長く必要とする作業についてはこの期間に実施することができ、コンピュータ演習室におけるストレージ管理運用についてはあまり意識していない。
(4)データアクセス管理
    中京大のコンピュータ演習室では、主に各種サーバ向けのNFSと、端末PC向けのCIFSによりストレージシステムを開放している。コンピュータ演習室内では学生が一斉に同一課題に取り組むが、端末PCからCIFSでストレージシステムへアクセスする場合と、Linux等のアプリケーションサーバを介してNFSでファイルサーバへアクセスする場合があり、各ユーザ領域のアクセス制御は重要な課題である。それはストレージシステムで提供されるNFSとCIFSでアクセス制御に関して微妙に違いがあり、一般ユーザがそれを認識できないからである。例えばNR1000Fでは、CIFSに対してNFSのアクセス制御が暗黙的に上書きするため、Windows等からCIFSでアクセスするユーザから、アクセスできるはずのファイルにアクセスできないという事態がよく発生する。
(5)デバイス管理
    大学におけるコンピュータ演習室では、前述の(3)ストレージ管理で述べたように、システムの大規模化、複雑化に対応するためのリプレース、構成変更等の大きな作業は休暇期間中に実施している。他の企業や研究所等と異なり、ユーザへの影響をあまり考えずに作業することができる。ただし、最近では卒業見込み学生の就職活動早期化等の影響で、春期休暇中の利用希望が増えており、年間通してのシステム提供を考えると、今後短時間のリプレース作業およびデータ移行ができるシステムの導入を検討しなければならない状況になっている。
(6)データレプリケーション
    中京大のコンピュータ演習室では、データ複製等のデータレプリケーションは行っていない。キャンパスが複数あり、学生がキャンパス間を行き来するような大学のコンピュータ演習室ではデータレプリケーションは必要な機能と思われる。例えば、常に各キャンパスのストレージシステムが互いに複製を持つことで端末PCとの距離が近くなり、アクセス速度が向上するとともに、ディザスタリカバリ等が自然に実現できる可能性があるからである。
(7)ファイルシステム
    ストレージシステムをユーザ側から見たときにユーザ側で認識できるものはファイルシステムであり、その動作・運用には高可用性、高速性が要求される。また、コンピュータ演習室のような講義で使用する場合にはファイル共有による課題提示・提出がストレージシステム上で行われるため、ファイル・ディレクトリへのアクセス制御がユーザにより容易に設定できることが必要である。
(8)その他(圧縮、暗号化など)
    中京大のコンピュータ演習室では、ストレージシステムに圧縮や暗号化は行っていない。ストレージシステムに保存されているデータについて、以前はほとんどが共通課題に対するレポートであったが、最近は電子メール等の私的なファイルが保存されることが増え、それらの多くは個人情報であるため暗号化等による保護も検討しなければならない。しかし大学の場合、ユーザの多くは学生であり4年以上の長期にわたって保存し続けることは稀であることと、教育と言う立場から教員が学生を指導するという関係、そしてファイルへのアクセス速度のことを考えると導入に踏み切れないのが現状である。

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