理化学研究所
姫野龍太郎
次世代スーパーコンピュータは来年度から部分的に稼働が始まり、再来年度には全システムの稼働が予定されている。この稼働に合わせて、生命科学分野でのグランドチャレンジが2006年秋から理研を中心にして行われている。次世代生命体統合シミュレーション研究開発プロジェクト(ISLiM)と名付けられたこの挑戦はいよいよ佳境に入る。このプロジェクトはペタスケールのシミュレーション技術によって、ライフサイエンスの定量的解明にブレークスルーをもたらす仮説-検証型の新たな研究手段を提供し、計算科学により生命現象を定量的かつ統合的に理解・予測・解明することを目指すと共に、創薬・ヘルスサイエンスサイエンスへの貢献、新規医療技術の実用化を図るものである。この実現のため、分子・細胞・臓器全身という 3つの階層に分かれた研究チームと、大量の実験データから法則に迫るデータ解析融合チーム、更に脳神経系チーム、全てのチームを支えるHPCチームの 6チームで取り組んでいる。これらのチームで現在開発中のソフトウェアは量子化学や分子動力学から構造流体連成計算、脳の局所回路モデル、可視化ソフトウェア、並列化のためのミドルウェアなど、合計34本にのぼる。これまでの開発で、並列化に関して 1,024を超えるところまでテストが終わったものが18本、8,000並列までのテストが終わったものは 9本という状況である。今後は次世代スーパーコンピュータでの実効性能と実行時間の予測を行い、どの程度のモデルでどのくらいの計算をするかを検討してゆく予定である。
スーパーコンピュータ、生命科学、シミュレーション、分子、細胞、臓器、全身、脳神経系、マルチスケール