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会長あいさつ

九州大学情報基盤研究開発センター
村上 和彰

 おはようございます。2008年度合同分科会にお集まりいただき、どうもありがとうございます。
 10月に入り、秋晴れのいいお天気が続いていたところでございますが、昨日からどうも天気が崩れて、このような雨模様となり、少々残念に思っております。このようなちょっと鬱とする天気に連動してか、最近のニュースもそれほど明るくはございません。金融危機があったり、我が国の経済も減速傾向にあるようなことが言われております。
 こういう時には、政治の世界では、「Change−変革−」が叫ばれることが多いようです。いまホットなアメリカ大統領選挙でも「Change」、先の自民党総裁選挙でも「チェンジ」という言葉が聞かれました。が、「変革」というのはその先に何があるのか実は分からない、したがって単に「変える」ことだけを目的とするのでは駄目で、その先をもっと良くするような概念が必要だと思います。
 幸いにも、我々技術者は、「イノベーション」という言葉を持っております。今回の合同分科会は「イノベーション」をキーワードに開催いたします。この後、天野先生から、開催趣旨説明がございますが、私なりにこの「イノベーション」について少しお話させていただきたいと思います。
 「イノベーション」には何が必要か?当然ながら、イノベーションを産む能力、あるいは、そういう気持ち、前向きなマインドが必要です。が、それだけでは十分ではありません。すなわち、イノベーションの最初の始まりは、ある人の「思いつき」、「夢」の場合がほとんどだと思います。つまり、この最初の状態では、時間的に「点」、空間的にも一人ということで「点」なわけです。しかし、「点」のままでは、イノベーションになり得ません。これを「面」に持っていく必要があります。
 今日も「夢をかたちに」、「夢の見える化」といったご講演があると思いますが、イノベーションのためには、やはり時間的なプロセスが必要です。また、夢を本当のかたちにするためには、一人の力だけでは不十分で、空間的な広がりが必要です。時間的、空間的な広がりを持つ、つまり「面」となって初めてイノベーションというのは達成できると言えます。
 そのような時間的、空間的な広がりをもたせるには、個々人の能力、マインドだけではなく、「組織的な支援」というものが必要ではないかと思います。さらに、社会的には当然ながらひとつのイノベーションだけでは不十分なわけで、連続的、継続的、持続的に複数のイノベーションを生んでいくような仕組み、仕掛けが必要だと思います。
 では、翻って、このSS研の立場から見て、イノベーションのためにどういう支援、あるいは、継続的なイノベーション創出のためにどのようなサポートができるのでしょうか?今日はそういう議論の場になると思っております。いろいろな考え方があると思いますが、私の方から二つほど今後のSS研の活動に向けてご提案させていただきたいことがございます。
 ひとつは、我々は、イノベーションを生む現場にいるわけであり、そのイノベーションを生むための道具としてのコンピュータを作り続け、あるいは使い続けているわけです。特に「革新=イノベーション」を生むためのコンピュータは、それなりの能力を持ったもの、つまりスーパーコンピュータが必要です。SS研の会員の皆さまにおかれましては、それぞれの機関において、スーパーコンピュータを用いたサービスを提供されており、また、対応するユーザをお持ちであり、かつ、スーパーコンピュータを利用した研究をされているかと思います。そういったスーパーコンピュータを今後とも持続して作り続け、あるいは使い続けるためには、それなりの説明努力、つまりそのようなスーパーコンピュータが今後も必要であるということを言い続けていくということが必要ではなかろうかと思います。
 常々、私は、日本ではスーパーコンピュータ、HPCを持続させていくための説明努力が十分に行われていないのではないかと危惧しております。ご存知の通り、アメリカでは毎年11月にSCという国際会議が開催されており、ここでは様々な形でHPCをやっていくことの必要性というものを言い続けていると認識しています。HPCには当然お金を使いますし、莫大な国のお金も使うわけですから、納税者に対してHPCの必要性を説明し続けるというのは、ある意味義務だと考えます。そして、SCという国際会議は、その説明責任を果たすための非常によい場になっていると考えています。
 残念ながら、日本にはそういった場がございません。SS研は一つのユーザフォーラムですが、ユーザフォーラムという殻を脱して、我が国の国民、納税者に対して、HPCを持続することの必要性を説明する場に変革することが必要ではないでしょうか?SS研を一つの核として、そのような活動を今後展開していくことを提案いたします。
 二つ目ですが、イノベーションの成果、たとえばシミュレーション結果とか、あるいは、そのシミュレーション結果から生まれてきたイノベーションとか、を教育に還元する活動を提案致します。先ほど、「持続」という話をしましたが、持続させるためには教育が何より大事であることは論を俟ちません。シミュレーション結果を見える化、可視化する道具を我々は持っています。可視化したシミュレーション結果を如何に初等中等教育に使っていくか、そのような活動がぜひ必要だと考えております。
 これも先ほどのSCの話になりますが、SCに中にはいくつかのプログラムがあり、その中の1つに「K-12 Education」というプログラムがあります。これはアメリカのkindergarten(日本の小学校1年生)から高校生までを対象として、HPC の成果をどうこれら初等中等教育に活用するか、小学校、中学校、高校の先生が教室の現場でどうシミュレーション結果を理科等の教科に活用しているかといった情報交換するプログラムです。我々もこれを見習って、単にHPCの必要性を言うだけでなく、シミュレーション結果、HPCの成果を如何に教育に活用していくか、そういう観点でのSS研活動も必要ではないでしょうか?
 これから、来年度に向けて、いろいろなWG等の立ち上げの話が出てくると期待しています。いま申し上げました趣旨、すなわちイノベーションをサポートする、あるいはイノベーションを持続して生み出していく、そのためにはSS研としてどういうことをやっていく必要があるのだろうかということも念頭に置いて、来年度の活動に向けた様々なご提案をいただきたいと考えております。今日、明日の合同分科会がイノベーションを考えるいい機会になればと考えております。みなさま、精一杯ご議論のほどよろしくお願いいたします。(拍手)

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