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SS研会長あいさつ

九州大学情報基盤研究開発センター
村上 和彰

 おはようございます。今年5月からSS研会長を拝命しております、村上でございます。開会に先立ちまして、一言ごあいさつ申し上げたいと思います。
 本日のプログラムの趣旨については、ただいま企画委員の青柳先生からご紹介があった通りでございます。ご承知の通り、我が国におきましては、次世代スーパーコンピュータ、いわゆるペタコンの開発が進んでいるところでございます。システムの開発とあわせまして、アプリケーションの開発も進んでいるところではございますが、前人未到の性能領域、システム規模も今までにない規模となる ことから、いろいろと分からないことだらけという状況にございます。たとえば、性能チューニング1つをとっても、残念ながら前もってシステム全体を性能シミュレーションできるような状況ではございませんので、いろいろと知恵を絞ってプロジェクトを進めていく必要があると思います。
 青柳先生からお話がありましたが、コア数で数万規模、メモリも多階層構造になってきています。性能を出さなければいけない、性能チューニングしなければならない立場からすると、どうしてもアーキテクチャを意識せざるを得なくなるわけです。ところが、過去を振り返りますと、本日も小柳先生から歴史を振り返るお話がありますが、例えば80年代に MPP(Massively Parallel Processor)の時代がありました。この時代のプログラム開発時の最大の関心事は何であったかと言うと、システムインターコネクト(相互結合網)のトポロジーやそのレイテンシー、バンド幅を意識して如何にしてプログラム性能を上げるか、ということでした。そのようなあまりにもシステムに依存し過ぎたプログラム開発手法が、最終的にはソフトウェア開発コストを引き上げる結果となり、全体として成功しなかった遠因になったと言えると思います。この問題を回避するには「システムの仮想化」、すなわち、ソフトウェア開発者に対して如何にシステムを抽象化するかが鍵を握っていると思います。
 さて、ペタスケールの時代ともなると、確かにシミュレーション時間そのものは短くなるかも知れません。しかしながら、そのためのソフトウェア開発、および、得られたシミュレーション結果の分析という前処理と後処理、これらをトータルで見て性能を議論していく必要があると思います。そこで、本日はまず、前処理にあたりますソフトウェア開発に関しまして、JPLの Dr.Zimaと筑波大の佐藤先生に言語に関するお話をして頂きます。一方、後処理に関しましては、理研から小野先生に可視化のお話をして頂くことになっています。
 この可視化ですが、最終的な分析は結局は人間に頼っているわけです。シミュレーション結果も膨大な量になってきますと、人間に頼った分析は自ずと限界が見えてきます。そこで、今後は、膨大なシミュレーション結果から何らかの法則や問題点を自動的・機械的に発見する、そのような発見科学と計算科学の統合化が研究開発として必要になってくると思います。
 また、本日のプログラムには含まれておりませんが、ペタスケール時代にとってより重要なのは「シミュレーション中にダウンしない」、つまり、昔で言うところの RAS技術、今で言うところのディペンダビリティ技術だと思います。そのためには、先ほども触れましたが、「システムの仮想化」がより重要となってきます。システムがどのようなアーキテクチャ、あるいは、どのようなオペレーション状況にあるのかに関わらず、ユーザに対して一定レベルの抽象度でマシンを見せ、物理的にはどのような形になっているか分からないけれども、ユーザが想定した論理的な形で動き続けるという、仮想化技術が今後ますます重要になってくると思います。
 最後に、ペタコンを手に入れ、これを使い続けることができるという「持続性」、これは「開発の持続性」にも関わってくると思いますが、これを考えるとやはり TCO(Total Cost of Ownership)を如何に下げるかについて、我々は真剣に考えていく必要があると思います。これは大学のセンターレベルでも当然ですし、国レベルでも TCOといったコスト意識を持たない限りは、ペタコンのような道具を持ち続けることは難しいと考えています。
 以上、いろいろな側面で議論すべき課題がございます。本日のHPCフォーラムのような機会を利用して、皆さんとこれらについて議論出来ればと思っております。本日は一日盛りだくさんの内容でございますけれども、せっかくの機会ですので、我々の道具でありますペタコンを今後どう持続し活用していくかについて、有意義な議論ができればと思います。以上、簡単ではございますが、開会のごあいさつとさせて頂きます。(拍手)

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