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5. 計算結果の紹介

 最後に最近の私たちの研究成果を簡単に少しだけ紹介させていただきます。先に磁気リコネクションの発生には何らかの(異常)抵抗の発生が必要であり、抵抗はプラズマの不安定を通して励起された波動とプラズマ粒子との波動−粒子相互作用によって生じる、と述べました。私たちはこうした磁気リコネクションの発生に必要な異常抵抗の発生プロセスを研究するために粒子シミュレーションを行っています。異常抵抗の原因となる不安定は反平行磁場配位を支える磁力線垂直方向に流れる電流の強度がある程度以上強くなると不安定になると考えられています。太陽フレアや磁気圏尾部を例にとって考えると、観測される反平行磁場構造を支える電流層の厚さはイオンのスケール程度か、より大きなMHD的なスケールの厚さであることがわかっています。このようなスケールの電流層ではサブストームやフレアを説明できるような速さで成長するのに十分な抵抗を供給する不安定は、これまで理論的には見つかっていませんでした。細かい話は専門的すぎるので省略しますが、私たちの計算結果からは、「MHD的なスケールの不安定と電子スケールの不安定がカップリングすることによって従来考えられていたよりも強い抵抗が電流層中に発生し磁場を大きく拡散する。」ことが発見されました。今回の私たちの計算では電子とイオンの質量比として400という大きな値をとっており、そのお陰で電子スケールの不安定とMHDスケールの不安定をはっきりと分離することが可能になりました。その結果、従来確認することのできなかったような異なるスケール間の不安定の非線型カップリングプロセスを見ることができるようになったのです。(図7)


図7: 粒子シミュレーションのスナップショット。左から電流ベクトル、電場、密度



MHDスケールの不安定が成長し電子スケールとのカップリングが始まると共に系全体の磁場エネルギーが大きく減少していることが図8から確認できます。今回は磁気リコネクションが起る面に垂直な面内での2次元のシミュレーションを行いましたが、将来、もっと大きな計算が可能になった時には、今回の計算で発見された磁場散逸過程が実際に磁気リコネクションの種になり得るかどうか3次元の計算で確かめる必要が残っています。


   図8: 系全体の磁場エネルギーの時間変化


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