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質疑応答「VPP800における大規模プラズマ粒子シミュレーション」


−司会− 宇宙科学研究所 藤井孝藏

【司会】
 それでは、ご質疑、ご討論をお願いします。

【矢木】(九州大学応用力学研究所)
 計算自体ではなく、最後の結果のグラフがよく判らないのですが、エレクトロンのスケールを入れて、このようなノンリニアのカップリングで、スモールサイズとラージサイズをカップリングしてリコネクションレートが増えるというお話ですが、ケルビンヘルムホルツ不安定性(K.H)自体はイオン系だけで起こりますので、このグラフはエレクトロンのダイナミックスが大きく関わっているという結論になるのでしょうか。

【篠原】(発表者:宇宙科学研究所)
 イオンのK.Hだけだと、それはイオンとイオンの衝突の効果にしかなりません。K.Hはイオンスケールで動いているので、電子は磁力線にずっと張り付いてしまうため衝突という効果になるからです。ですから、電子スケールの不安定性が励起されない限りは電気抵抗を生じることにはならないのですが、その電気抵抗を生じるような小さなスケールの不安定性というのが、イオンスケールの不安定性が発生することによって励起条件を満たすような形になって電気抵抗を生み出すのです。

【矢木】
 例えば電子を流体的に扱って、電子のイナーシャーだったらカイネティックにやらなくても流体でもできますか。

【篠原】
 今回はそのあたりの説明を端折ってしまいましたが、電子を流体に扱ったとしても慣性抵抗みたいなものが使えますが、実際には電子の運動、粒子の運動論的な波動とのレゾナンスみたいなものが本当は重要なのです。粒子が波動とレゾナンスするということを入れない限りは、このようなことは起こりません。電子を流体にしただけでは今回の結果はそのままには見えないのです。

【三浦】(富士通(株)コンピュータ事業本部)
 シミュレーションの手法として粒子はPEに固定して電磁場を分割して必要に応じてSPREAD MOVEをやっておられるということですが、時間が経つと粒子の座標というのはどんどん動いてしまうと思うので、SPREAD MOVEをやらなければならない範囲が広がってくるのではないでしょうか。

【篠原】
 今は全部やってしまっています。完全に重複ローカルに転送してしまいます。

【三浦】
 ということは、電磁場の計算を重複して各PEで全く同じことをやるのとどう違うのでしょうか。

【篠原】
 速度的な問題ではほとんど変わらないのですが、メモリの問題があって、全部重複で持たせると、力を計算する際、その場の電磁場の量だけコピーすればよいのですが、常に重複でやっていると、現在と未来など中間の変数等を全て重複で持っていかなければならないので、メモリは非常に不利になります。それを稼ぐという意味でも分割しています。

【三浦】
 逆に粒子の方を座標によって他のPEに送り出すという方法は考えられないのですか。

【篠原】
 マッシブパラレルのようなことを計算機でやる時は、たぶんそのようなことを考えなければいけないのですが、今試してみた限りでは、その方がどうしても転送が多くなってあまり良い結果は得られません。

【司会】
 場のSPREAD MOVEというのは、粒子の方の計算をしている間にやっているのですか。陽に計算時間に入るのですか。

【篠原】
 陽に入ります。

【司会】
 そうすると、結構な負荷になってしまうのではないでしょうか。

【篠原】
 そうですね、ですから並列化して電磁場の計算が速くなった部分はデータ転送でほとんど相殺されてしまいます。

【司会】
 今のお話だと、例えばスカラ並列機でも結構いけるような印象を受けるのですが。メモリの問題を除いて、ベクトル機を是非使いたいという意図はどこかにありますか。

【篠原】
 粒子だけを考えるなら、おそらくスカラでも問題ないです。むしろ電磁場とのカップリングをどうするのかという点で扱いが変わるのですが、そのあたりはまだ深刻に考えてはいません。

【司会】
 VPP500と比べ、VPP800に変わった後の印象はどうですか。さきほど実行速度が3〜4倍になったと言われましたが、1.6から8.0Gflopsですから単純に考えると5倍ですよね。メモリとの問題もありますからこの程度の数字は当然ですが、若干定格どおりでなくなっているわけです。そのあたりの印象などについて、また、VPP800になったための工夫点などはありますか。

【篠原】
 むしろVPP800になってメモリが増えたことで、工夫が要らなくなりました。CPU時間の問題よりは、メモリがどれだけ多く取れるかということが結果を得るためには重要です。その意味では何も考えないでメモリを取れることにより、VPP800のほうが楽になりました。

【司会】
 ということは、以前はどうしていたのですか。

【篠原】
 VPP500の頃は、簡単には質量比を小さくすることにより、メモリを使わなくて済むような工夫をしていました。スキームとして工夫するようなことはしておりません。

【司会】
 すると、ベクトルであるとかスカラであるとかいう点以上にローカルなメモリをたくさん積んで欲しいとお思いですか。

【篠原】
 思っています。小さなメモリのものをたくさん繋いだのではメモリ転送のオーバーヘッドに勝てないので、ローカルに大きなメモリを持ったマシンの方が、この様な計算には向いていると思います。これは、天体のシュミュレーション全体に言えることではなく、パーティクル手法の場合にのみいえることですが。

【司会】
 ありがとうございました。(拍手)


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