本節では、3.3節で導出された大量データの管理課題を総合的に解決するストレージソリューションの技術分野とその方向性について展望する。
大学・研究所が多く保有する非構造型データの管理を効率化する技術はILMとストレージの仮想化である。
ILMは情報やデータの価値を技術的に測定し、その価値に見合うストレージサービスを対応させる、ある種のバランスマネジメントであり、データアクセススピード、データ保護・信頼性機能などのストレージサービスの選択と情報管理の自動化機能の導入によって構築される。
しかし、このような情報管理システムの実現については、関連するシステムサービス・設備投資の方針に基づく、管理機能の継続的な整備が必要である。さらに、データ管理、ファイル管理を超えるコンテンツ管理のレベルで情報を管理する必要性も、以下の会員調査結果からも明らかになっている。
一方、ストレージの仮想化は、ボリュームレベルの仮想化とファイルレベルでの仮想化があり、「4.1.3.ストレージ管理」で説明したように仮想ストレージ管理機能として提供されはじめている。
ボリュームレベルの仮想化機能は、ストレージ装置内の空きスペースなどの割り当ての自由度が増すため、ストレージ装置の有効利用に効果がある。また、ストレージ装置のリプレースに伴うデータ移行においても、容易に作業できるようになる。
今後、仮想ストレージ管理のThin Provisioning制御技術や仮想ディスクプール制御が提供され、データの保存が必要になったときに動的にストレージ領域が割り当てられ、効率的な運用が可能になる。
ファイルレベルの仮想化機能は、Global Name Spaceと呼ぶ仮想的に統一化されたファイル名前空間管理機能により、複数のNASが提供するファイルシステム空間を連結した単一のアクセスパスを提供する。Global Name Spaceにより、ファイル管理がシンプルになることから大量のファイルを処理するアプリケーションの拡張性が高まる方向に技術開発が展開されていく。
ストレージの仮想化技術はILMが必要とするストレージ装置の使い分けやファイルデータの再配置を容易化し、巨大ファイルシステム空間や大規模データアーカイブシステムの構築に必要な技術である。
このようにストレージの仮想化はリソースの有効活用やデータの移行ばかりでなく、ILMと組み合わせることにより、参加機関の誰もが悩んでいる人的負荷の軽減をもたらし、さらにはTCOの削減に貢献できる。