7.他大学の組織統合型情報基盤の実例
東北大学以外にも表-1に示すように既に5大学において組織統合型の情報基盤組織の整備が行われている。これらはいずれも大型計算機センターや附属図書館等の情報関連組織の統合という形で行われ、大きく分けて研究部門と関連事務を所掌する管理部門から構成される。特に旧帝国大学系では全国共同利用の大型計算機センターの機能をベースにプラスアルファして引き継いだ形であり、文部科学省の「国立学校設置法施行規則」において「情報基盤センター」として定義されている(第20条の4の5)18)。具体的には省令施設として、「研究、教育等に係る情報化を推進するための実践的調査研究、基盤となる設備等の整備及び提供その他必要な専門的業務を行う全国共同利用施設として、情報基盤センターを置く。」とされている。ここで従来の大型計算機センターと大きく異なる点は、1)研究、教育に係る情報化を推進する、2)実践的調査研究を行う、3)基礎となる設備等の整備を行う、という3点に集約される。特に、第2点によって、規則上調査研究機能が正式に付加され、錫質的な研究開発活動が可能になった点が注目される。
表-1:組織統合型情報基盤組織
表-2は情報基盤に係る10のキーワードについて、各大学の関連資料に明示的に記述されているものを筆者がピックアップしてまとめたものである。千葉大学は総合情報処理センターを持つ総合大学で情報基盤を整備した最初のケースであり、学内共同教育研究施設として新設された。4研究部門のほか、管理運営部門として情報基盤推進室を置き、事務の情報化を含むデジタル情報と紙媒体情報の統合的運用体制の確立を図ることを特徴としている。理工系の単科大学である東京工業大学の場合は、総合情報処理センターと理工学国際交流センターが組織統合したもので、この組織統合には図書館は係っていないが、国際共同研究等の国際交流と情報基盤の融合に最大の特徴がある。キーワード的に見ると、一般的に大規模計算、ネットワーク、学術情報、教育の4つが主な共通項として挙げられるが、各大学の研究部門数としては大阪大学が7部門と最も多く、東北大学が5部門、東京大学・九州大学・千葉大学が4部門、東京工業大学が3部門となっている。これら先行する大学の情報基盤組織が教育研究環境において大いなる成果を挙げることが期待される。
表-2:情報基盤センター比較