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8.おわりに

     知識が経営資源であり、文化が経済のdriving forceとなるデジタル経済の時代が到来した。2005年あたりを境に情報社会もネットワークの時代からコンテンツの時代へと遷移しつつあるように思える19)。情報革命の真っ只中にあることを割り引いても、大学は未曾有の大転換期にある。国立大学の法人化については、国立大学協会(設置形態検討特別委員会とその下の4専門委員会)や文部科学省(調査検討会議とその下の組織業務、目標評価、人事制度、財務会計、の4委員会)において鋭意検討が進められる一方、小泉政権の民営化路線を受けて、平成13年6月11日に経済財政諮問会議においていわゆる遠山レポートと呼ばれる「大学の構造改革の方針」が出された。これは大学の再編・統合、国立大学法人への早期移行、国公私立大学トップ30の世界水準への育成の3つを宣言した内容となっている。平成13年7月には、文部科学省の各委員会のとりまとめである「中間報告の取りまとめの方向(案)」が出され、更に同年9月末にこれに基く「中間報告」がまとめられ、平成13年度末の最終報告に向けてPublic Commentsが求められる予定である。こうしたことは、大学は法人化を待つまでもなく今やグローバルな視野からの国際的競争環境に置かれていることを示唆している。
     社会学者の橋爪大三郎氏によれば、米国のハーバード大学では、図書館を中心とする組織的な情報管理の上に研究と教育が立脚しており、それ故に図書館の維持管理に相当のエネルギーと神経を使っているという20)。これは図書館が図-15に示すような重要な情報基盤の1つとして位置付けられているからにほかならない。一方、来るべきコンテンツの時代には、電子ジャーナルに代表されるように情報のstock機能を市場が担い得る時代ともなった。情報の持つ公共性と市場性の相克の中で、今や情報基盤は大学の教育・研究にとって最も信頼のおけるプラットフォームとしての役割を演じなければならない。情報基盤の有無が、ひいては国際舞台において大学間のデジタル・ディバイド(情報格差)を生じさせかねないであろう。教育研究に係る基盤整備が政策課題にあがっている今日、我が国として抜本的な対応をとることが、焦眉の急になっていることも論を待たない。
    図15
    図-15:大学内における情報基盤の位置付け

     最後に、本稿をまとめるにあたり、東北大学附属図書館の小田忠雄館長には全般に渡って多くのご教示・ご助言を頂いたので、記して深く感謝の意を表したい。


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