超高速ネットワークシステムの整備
東北大学では、1988年から我が国初の本格的な学内ネットワーク(LAN)として東北大学総合情報ネットワークシステム(TAINS:Tohoku University Academic / All-round / Advanced Information Network System)を運用してきたが、1995年からはATM(非同期伝送モード)方式を用いた622Mbpsのバックボーン・ネットワークSuperTAINSに機能拡充し現在に至っている。このネットワークでは、仙台市内に点在する6つのキャンパスをATMスイッチ(max. 622Mbps)とGigabit Etherスイッチ(1Gbps)で相互に接続し、各キャンパスにはFDDIループ(100Mbps)が装備されている。このほど平成12年度補正予算の措置を受けて2001年12月から最大10Gbpsの回線速度を有する超高速ネットワークシステムが稼動の予定である。
図-10:超高速ネットワークシステム概略図
これによりいよいよギガビットネットワークによるブロードバンド時代へと歩を進めることになる。また、Fire Wallを装備したセキュアなネットワークを目指す。その概要を図-10に示すが全体がバタフライ(蝶蝶)型となっている。
なお、本ネットワークは、対外接続装置を経由して全国的なバックボーン・ネットワークに接続される。これは、国立情報学研究所が運用するSuperSINETであるが、今や光時代にふさわしいバックボーン技術はWDM(波長分割多重)12)とOXC(光クロスコネクト)13)であり、近い将来の基幹網は電気的な処理が介在しない「フォトニック・ネットワーク」へと進化する。SuperSINET(最大10Gbps)は、2003年1月から稼動開始の予定で、先端の製品の市場投入に合せて4フェーズによる段階的な整備が計画されている。バックボーン・ネットワークの構成例を、図-11に示す。平成13年度は東北大学を含む5大学、6機関が接続予定で、これらの機関は、図-11の右端の大学・研究所等のように接続される。
図-11:Back Born Network構成例
IT戦略本部が2001年6月に決定したJapan2002プログラムにおける世界最先端IT国家の実現の一環として、文部科学省でも2001年8月28日に発表した「戦略性のある『未来への先行投資』による人材・教育大国と科学技術創造立国の実現」と題する基本方針を2001年8月28日に経済財政諮問会議に提示した。その中でSuperSINETの拡充のほか、各研究機関のスーパーコンピュータや大規模データベースを高速ネットワークにより共有して、高度なシミュレーションや遠隔地との共同研究を可能とするVirtual Laboratory(仮想研究所)構想であるITBL(IT-Based Laboratory)についても項目として挙がっており、これらは情報基盤の整備とも大いに関係してくることになる。また同方針には、高速大容量通信時代が眼前に迫り、インターネットによるe-Learningが俄然脚光を浴びだしたことから、大学等におけるe-Learning推進についても触れられている。米国ではe-Learningは成人の学習機会として、特にProfessionalな職業教育として盛んになってきており、スタンフォード大学のStanford Online14)などは、遠隔教育だけで修士学位を授与するシステムをつくりあげている。FTTH(Fiber To The Home)でブロードバンド(広帯域)インターネットが一般家庭にまで普及したとき、大学教育そのものの様相は確実に一変するであろう。と同時にこれに適応できない大学は駆逐され、代わって民間を含めた新たな供給者が現れるであろう。大学にとっては今や戦略的な対応が強く求められるのである。