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3. NAS Parallel Benchmark (Version 1.0) によるパフォーマンス評価

 Numerical Aerodynamic Simulation(NAS)プログラムはNASA Ames Research Centerで開発されたベンチマークプログラムであり、さまざまな並列スーパコンピュータシステムの性能評価のために使用されている。現在http://www.nas.nasa.gov/Software/NPB/においてNPB2.3が提供されているが、最新バージョンはスカラー並列用にチューニングされており、ベクトル長が十分とれないこともあって、ベクトル並列計算機システムの性能を評価する場合は通常NPB 1.0を用いる。NPB1.0は8種類のベンチマークプログラムから構成されており、5種類のkernelと3種類のsimulated computational fluid dynamics(CFD)アプリケーションからなる。さらに問題の大きさに応じてClass A, ClassB, Class Cに区分される。表3-1にそれぞれのクラスの問題の大きさを示す(NAS Parallel Benchmarks (Version 1.0) Results 11-96, S. Saini and D. H. Bailey, Report NAS-96-18, Nov. 1996, Table 1より抜粋)。

表3-1 NPBにおける各クラスの問題の大きさ

ベンチマークはクラスCの問題の大きさを選び、kernelとしてMG, CG, FTを、CFDとしてLU, SP, BTを使用した。 ここでMGは3-D Poisson PDEを解くためのmultigrid kernelであり、CGは大きなスパース対称正定値行列の最小固有値の近似解を計算するための勾配共役法、FTは3-D PDEを解くためのFast Fourier Transform、LUにおいては正規スパースブロック5x5下、上三角行列を解くためにlower-upper diagonal factorizationではなくsymmetric successive over-relaxation(SSOR)スキームを用いている。SPはscalar pentadiagonal solverであり、BTはblock tridiagonal solverである。 Kernelの詳細な説明はTHE NAS PARALLEL BENCHMARKS, D. Bailey, E. Barszcz, J. Barton, et al., RNR Thechnical Report RNR-94-007, March 1994に記述されているのでそちらを参照していただきたい。最近ではCFDとして新しい計算手法も提案されておりsp,btのような手法は古典的になりつつある。  表3-2にベンチマーク環境、表3-3にコンパイルオプション、表3-4にコンパイルオプションの説明、表3-5にクラスCに対するベンチマークテストの結果(平成11年8月17日)を示す。 N社の共有型ベクトル並列マシンでもほぼ同等の性能が得られている。これは1CPUあたりの理論性能はVPP5000の方がN社のマシンより20%程度すぐれていたが通信においては共有型の方が有利であり総合性能として見るとほぼ同程度ということである。しかし共有型マシンでもマルチノード間で通信を行う場合は通信のパフォーマンスは当然落ちる。(この結果はNASAにsubmitしたものではないので公式なデータとして使用できないことに注意してほしい。)。

表3-2 ベンチマーク実施環境

表3-3 コンパイルオプション

表3-4 オプションの説明

表3-5 クラスCに対するベンチマークテストの結果


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