[目次] [1ページ目] [前ページ] [次ページ] [質疑応答]

( 6 / 7 )

7.日本におけるe-Learning

7.1 制度

7.2 インターネット授業

     わが国の高等教育機関においてインターネットを利用して授業の配信を行っている機関は、表4にみるように、もっとも多い大学の学部(大学の各学部対象の調査)で11.4%と少ないが、「計画している」を加えると約30%にのぼり、インターネットによる授業配信に関心を示す高等教育機関は、一定程度はあるとみてよい。すでにインターネットを利用できる環境はすべての大学にあるため、基本的なインフラの整備の段階はクリアしており、機関のホーム・ページに各種の情報を掲載することも、電子メールを利用することも日常的になっている。したがって、インターネットそれをどこまで授業の配信の手段として利用するか、現段階の検討課題であるが、通学制の大学にとって、遠隔教育が新たな授業形態であることに加えて、有職成人学生の比率が低いという条件をもつ日本では、アメリカの例に見られるようなe-Learningに対する需要が顕在化していないという状況を考慮する必要があろう。

    表4 インターネット授業の配信
    (%)
      大学学部 短大 高専
    行っている 11.4 4.3 8.0
    計画している 22.0 17.3 22.0
    出典: メディア教育開発センター(2001)『全国高等教育機関におけるマルチメディア利用実態調査』21、以下の表の出典は同様。

     2001年より可能になったインターネット授業に対して単位認定を行っている学部の比率は1.6%とごくわずかでしかなく、計画しているを含めても10%に満たない(表5)。インターネットを利用して授業を配信することまでは考えても、それによって単位認定をするところまではいっていない様子がうがかえる。

    表5 単位認定しているインターネット授業
    (%)
      大学学部 短大 高専
    行っている 1.6 0.6 0.0
    計画している 6.7 2.8 2.0

     海外からのe-Learningに対して自機関の単位に互換しようとする動きも、まだまだである(表6)。おそらく、日本の大学にとって、学部段階の教育でそれを行うには語学の壁がネックになるであろうし、専門大学院が未発達であるため海外からのe-Learningコースに対する需要は、高等教育機関においてはさほど大きくなるとは思われない。むしろ、あるとしたら、MBAの取得のために社員を留学させていた企業であろう。事実、日立製作所はこれまでの現地への留学によるMBA取得をe-Learningに代替させている。

    表6 海外の大学からのインターネット授業の単位化
    (%)
      大学学部 短大 高専
    行っている 0.0 0.0 2.0
    計画している 2.5 0.9 0.0

     このように、インターネットを利用した授業の配信という意味でのe-Learningは、まだ、制度上、緒についたばかりであるとはいえ、決して好調な出足というわけではないようだ。

7.3 ウェッブを利用した教育サービス

     ほぼすべての機関がホーム・ページを持っているが、それがどのような教育サービスに利用されているのか、とくにウェッブの双方向性の機能を利用したサービスに限定して検討しよう。表7はそれを大学に関してみたものだが、ウェッブを利用しての出願ができる機関は13.5%、ウェッブから授業登録ができる機関は6.5%と、まだ、多くはない。授業教材・配布資料の掲載や、授業への質問受け付けはさほど多くはないが、これは大学が機関として統一的に行っている比率であり、個別の授業になればこうした利用をしている比率は高くなる。
     ネット出願や授業登録の機能を持たせようと計画している機関も10%前後であり、今後、こうしたサービスを行う大学が爆発的に増加するとは考えにくい数字である。

    表7 ウェッブを利用した教育サービス
    (大学の%)
      行っている 計画している
    ネット出願 13.5 9.7
    授業登録 6.5 15.5
    授業教材・配布資料 20.0 13.0
    授業への質問受け付け 13.0 13.0


[目次] [1ページ目] [前ページ] [次ページ] [質疑応答]