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高等教育におけるe-Learningの現状と将来
−アメリカと日本−


1. はじめに
2. アメリカにおけるe-learningの普及状況
3. e-learning普及の需要側の要因
4. e-learning普及の供給側の要因
5. 現在の争点−教育−
6. 現在の争点−経営−
7. 日本におけるe-learning
8. 日本の将来
NIME)吉田 文

メディア教育開発センター
吉田  文
aya@nime.ac.jp


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1.はじめに

2.アメリカにおけるe-Learningの普及状況

     まず、アメリカの高等教育機関において、e-Learningがどの程度普及しているのかをみよう。The Campus Computing Surveyというアメリカの高等教育機関を対象としたITの浸透状況に関する調査をみると、1999年では、45.4%の高等教育機関が、少なくとも1つの完全なオンライン・コースをもっており、それが、2000年には55.5%、2001年には59.8%とやや上昇している1。この調査は1994年より毎年実施されているが、「オンライン・コース」の有無に関する質問は99年以前にはなく、それ以前の状況はわからない。しかし、ウエスタン・ガバナーズ大学やカリフォルニア・バーチャル大学の設立が大きな話題になり、実際に開校されたのが1998年であるから、すでに90年代半ばに、既存の大学において「オンライン・コース」が、さほど普及していたとは思われない。おそらく、90年代後半に急速に普及したのであろう。
     そして、2001年のデータから、高等教育機関のタイプ別にみれば、完全なオンライン・コースをもっている公立大学は84.1%、私立大学は53.8%、公立4年制カレッジは83.3%、私立4年制カレッジは35.5%、短期大学は74.0%となっている2。公立大学と短期大学とが、オンライン・コースのリーディング機関となっており、私立大学ではさほど普及していないことが明らかである。
     アメリカの場合、教育の機会にあずかれない者に対して、郵便、放送などの配信技術を利用して教育を行う遠隔教育に関しては、100年余になる遠隔教育の歴史の蓄積があるが、インターネットによるe-Learningは、それまでの遠隔教育に代わる新たな配信の技術として脚光を浴びているという背景がある。学習者とコンテンツの提供者との間の同期・非同期の双方向のコミュニケーションが可能であるインターネットは、従来の配信の技術がコミュニケーションという点でなかなか双方向性を確保できなかった難点をクリアしたものとして、遠隔教育の潜在的な需要を喚起したのである。1998年に遠隔高等教育の履修者数は約70万人であったが、その数は2002年には220万人と3倍強にまで増加するだろうと予測されていた3
     遠隔教育の配信の技術にインターネットを利用していると回答している高等教育機関は、1995年にはわずか14%でしかなかったが、1997年には同期のインターネットの利用19%と非同期の58%とを合わせて77%の機関がインターネットを利用するまでになっている4。非同期の双方向コミュニケーションが可能となるインターネットの特性が、時間と空間を異にする遠隔教育においてはメリットとして機能して、アメリカのe-Learningは急速に普及したとみることができる。
     そして、高等教育におけるe-Learningの市場的な価値は、2000年に40億ドル相当であったが、2003年には110億ドルにまで成長するという予測もなされている5。こうした予測の数値そのものは、調査によって異なり、値そのものに対する信憑性の問題は残るとはいえ、単に、e-Learningコース数や履修者数が増大するというだけでなく、それにともなう市場価値も大きく成長するとみなされている点では一致している点が興味深い。おそらく、教育がこれだけの市場価値をもつとみなされたのは、かってなかったことであろうし、教育がビジネスの対象としてこれだけ注目されたこともかってなかったのではないだろうか。
     e-Learningが、なぜ、このような事態をもたらしたのか、その普及の要因はどこにあるのか、次にその問題について需要側と供給側の両面から検討しよう。


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