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5.マルチスケール解析のための連成解析技術 [16]

 固体地球システムは、広い時空間スケールに渡る多様な物理現象が連成する大規模で複雑なシステムである。このような固体地球システムの変動現象をシミュレーションするためには、超並列計算機上での多様な固体地球の要素モデルの連成解析が必要であり、それぞれのモデルの組み合わせを考慮して、実行、通信、I/O等の統合制御を行うことが必要である。しかし、個々のプログラム開発において、それらを毎回行なうことは極めて困難である。このため、固体地球プラットフォームにおいて統合された固体地球の要素モデルを効率的安定に実行する、統合的な連成制御方法の開発が進められている。GeoFEMでは、可視化サブシステムも1つの連成サブシステムとして扱っている。

 GeoFEMのカップラーは、異種解析モジュール間のデータ転送のための、モジュール間のメッシュの関係の把握、物理量の内挿、プロセッサ間のデータ転送を実施する。これにより、解析モジュール利用者は、連成解析モジュール間でのメッシュの依存関係、物理量の内挿、プロセッサ間のデータ転送を意識することなく、並列環境下において連成解析システムを構築することが可能となる。図-8にGeoFEMにおけるカップラーの概念図を示す。連成する各解析モジュールの分散入力メッシュデータの関係をXmeshというカップラーツールで解析し、その分散メッシュデータ間の幾何学的関係データを生成する。連成解析時には、その関係データをカップラーが利用し、自動的に並列データ転送、データ内挿が行われる。


図-8 GeoFEMのカップラーの概念図

 次に、図-9にGeoFEMのカップラーを利用した連成解析システム構築の概念図を、図-10に連成システム全体の概念図を示す。


図-9 GeoFEMのおける、連成システム構築の概念図

図-10 連成システム全体の概念図例で、固体地球の準静的地震サイクル・動的断層破壊・地震波動伝播解析の連成概念を示す。

図-11 連成解析のためのカップラーを、Zooming解析に適用した検証実験例

GeoFEMでは、連成システムは以下のように構築される。まず連成するサブシステムプログラムをモジュール(GeoFEMの解析モジュールは、F90で書かれていることが前提)で包む。これは、GeoFEMでは、すべての解析モジュールの統合されたプログラムが1つの実行モジュールとなるため、変数、サブルーチン名が当たることを避けるためである。次ぎに、連成するサブシステムプログラムをプラグインする。Job controller を作成する。解析モジュール毎に、そのデータ構造とインターフェースデータ構造の変換サブルーチンを作成する。図-9の to_couple、from_coupleに相当する部分である。モジュール間の内挿サブルーチンを作成する。データのload, save サブルーチンの作成。そして、並列連成サービスを利用できるように、図-9に示す、カップラーとのインターフェースサブルーチンgeofem_get_data_md、geofem_put_data_mdをコールする。これだけで、自動的に並列データ転送、データ内挿が実施されるようになる。このように、GeoFEMでは、シリアル解析コードの連成システム構築に必要である最小限な作業は実施しなければならないが、並列に関連することは、全てGeoFEMのプラットフームが提供するため、ユーザは並列を意識することなく連成システムを構築することが可能となる。


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