[目次] [1ページ目] [前ページ] [次ページ]
(5/6)

5.広域機能分散コンピューティング

 発見探査型研究に限らず多くのシミュレーションによる最先端科学研究は、現在、1人もしくは、地理的知識的に集中している少数の専門研究者により行われている。そのため、現状では、非常に狭い専門領域の人たちにしか理解できない構造になっている。一方、最近になって本当に興味深い発見は、多くの分野の境界・複合領域から生み出されていることも事実である。そこで、IT技術を有効に使うことにより地理的知識的に制約されない専門家や異分野の多くの人たちが関わる新しいタイプの研究を模索していく必要がある。従って、前章に述べた機能分散制御システム化技術をさらに広域(Internet)にまで広げ、広域機能分散制御システムを構築することが急務である。このようなOPEN系での研究では、情報共有とセキュリティー、それに関連して先取権(著作権)問題をうまく取り扱わなければならない。つまり、研究者の成果の独占欲からくる情報遮断をできるだけ排除し、かつ、競争意識を駆り立てる構造が必要である。また、お互い持っている情報量が異なることで誤解が広がる可能性があることは、遠隔地における共同研究をしている場合には特に注意が必要な点である。このような技術的課題が全て解決した先には、現在の研究形態とは全く異なり、物理的組織に拘束されず参加意識のある専門家や異分野の研究者ネットワークからなるプロジェクトを常時スクラップアンドビルドする形の仮想研究所的な形態へ進化する可能性がある。このような形態(研究者が地理的知識的に制約なくつながった環境)の研究では、研究プロジェクト(仮想研究所)数は、原理的には研究者の総数の階乗の数だけ選択肢が広がることになる。なぜなら、研究者の集合に対してすべての補集合の集合の数は、研究者の総数の階乗の数にまで大きくなり、情報処理の観点からも単なる並列処理を超えたニューラルネット的な質的な変貌が期待できる。まさに、研究活動におけるIT革命が起こる可能性を秘めているのである。



[目次] [1ページ目] [前ページ] [次ページ]