教育の情報化が始まった時、我々は何を新しく出来るかと期待したのでしょうか?例えば、
- これまでの教育に纏わる雑用から少しは免れるかも知れない
- これまで教育の質の向上のためにやろうと思っていても物理的・時間的に出来なかったことが出来るようになるかも知れない
- 私学にとって避けて通れないマスプロ教育の質を上げることが出来るかも知れない
- 教員と学生との双方向のコミュニケーションに基づく教育が出来るようになるかも知れない
- これまで効果が上がらなかった遠隔授業や生涯教育が実施できるかもしれない
- これまでは考えられなかったような創造的でユニークな教育が出来るかも知れない
等々、色々な期待を以って導入に努めて来ましたが、最近のIT技術の進歩で、可能性は更に格段に広がりました。しかし、現実には、忙しさが増す一方で、教育すべき中身、すなわちコンテンツの開発が如何に大変なものであるかを実感しつつあります。これは、大学同士がお互いに、協調し、連携する以外に道は無さそうです。
教育にIT技術を活用することは、教育の基本理念である"機会の平等"の実現にも、また、情報公開を通して相互評価や社会からの評価によって特色ある充実した教育の実施にも、更に大学冬の時代と激動の時代を迎えつつある中、努力するユニークな良い大学の存続に資することの大なるは明らかです(2)。一方で、大学はあくまでも人間教育が中心であり、教育はフェイス・ツー・フェイスが基本であることは明確であり、IT技術による遠隔授業の利点は分かるが、対人関係の育成に弊害が出るのではないか、教育の画一化を強めるのではないかと言った負の面も忘れるわけには行きません。
このような認識の下、各大学、各教員のアイデンティティ、個性を尊重する事を基本として、各大学、各教員は、その上で多様な教育活動の華を咲かせて頂くための検討、実施を試み、私情協はそのための共通の基盤を提供する事に専念するという基本思想に基づく今回のCCCの目指すところは、我が国の今後の教育研究のあり方にとって極めて重要であると信じます。
共生の中での競争、ユニーク化の下での協調、これが今後の魅力ある大学作りには不可欠です。
参考文献
(1) | 「サイバー・キャンパス・コンソーシアムの発足に向けて」,第10回情報教育推進のための理事長・学長等会議検討資料,(社)私立大学情報教育協会,pp.41-60, 2001-8 |
(2) | 向殿政男,これからの大学の役割、1999年度教育研究支援専門研修会報告書、(社)私立大学連盟,pp.19-32, 2000-3 |