今回導入したVPP800システムは図1に示すように、VPP800/63本体とストレージサーバGen5から構成される。
図1. VPP800システムの構成図
VPP800/63システムは、これまでのVPP500/15と同じタイプの分散メモリ型のベクトル並列計算機である。システムは、63台のプロセッサ(PE: Processing Element)とプロセッサ間での通信のためのクロスバーネットワークで構成される。
各PEは64ビットアーキテクチャのベクトル計算機であり、ベクトルユニット、スカラユニット、メモリおよびデータ転送ユニットで構成される。表1に、1PE当りの主な緒元を示す。
表1. PEの主な緒元
ベクトルユニット(VU) | スカラユニット(SU) | ||
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理論ピーク性能 | 8GFLOPS | 理論ピーク性能 | 1GOPS(※) |
レジスタ容量 | ベクトル 128KB マスク 2KB | キャッシュメモリ | 一次 128KB 二次 2MB |
演算パイプ | (乗算/加算/ 乗算&加算/ 論理演算) 1 (除算/SQRT) 1 (マスク) 1 (ロード/ストア) 1 |
レジスタ個数 | 汎用 32 浮動少数点 64 |
論理アドレス空間 | 256GB | ||
メモリ(MSU) | |||
容量 | 8GB | ||
転送速度 | 64GB/秒 | ||
PE間スループット | 1.6GB/秒×2 | インターリーブ | 512 Way |
※GOPS(Giga Operation Per Second)、4オペレーションが同時実行可能。
63台のPEは、その構成と機能によりIO-PEとS-PE(Secondary PE)に分類される。
IO-PEとは入出力機構を備えたPEであり、S-PEは入出力機構を持たない演算専用のPEである。
VPP800/63は55台のS-PEと8台のIO-PEで構成されており、IO-PEは36.4GB(9.1GB×4)のディスクとネットワークインターフェースを備えている。
・IPLグループ
IPLグループとはシステムが分割して起動できる単位である。VPP800/63では1台のIO-PEと7台のS-PEの計8台のPEで一つのIPLグループを構成している。IPLグループ内のIO-PEはIMPEと呼ばれ、物理的にディスクを持たないS-PEに対してディスクを提供する機能を持っている。また、8台あるIMPEの内の1台がP-PE(Primary PE)と呼ばれ、システム全体を統括する。
VPP800/63では、IPLグループ単位に平行してIPLを行うために、システムの起動時間は、以前のスパコンVPP500/15が30分以上かかっていたのに比べてVP800では15分以下と半分以下になっている。
・PCG(Power Control Group)
PCGとはPEへの電源供給単位であり、PCG単位での縮退、拡張運転が可能である。VPP800/63では、4つのPEでPCGを構成しているので、IO-PEを含まない8つPCG全てを停止し、32PE構成のシステムまで縮退して運転でき、電力消費を押さえることができる。
導入したストレージサーバGen5は、XLEモデルの3バンク構成である。バンクは2つのユニットグループから構成され、それぞれのユニットグループには12個のディスクが格納されている。1つのディスクの容量は、18.2GBである。一方、VPP800システムとの接続用のHIPPIアダプタ(800Mbps)は、4つ実装しており4台のIO-PEにそれぞれを接続できる。したがって、3バンクで構成されるGen5のディスクを各IO-PEから独立して同時にアクセスするために、4つのファシリティに分割している。
図2にGen5の構成を示し、表2に各ファシリティのディスク個数とRAID5構成時の容量を示す。
図2. Gen5の構成図
表2. Gen5 XLEの構成
バンク | ファシリティ | ディスク個数 | 容量(RAID5) |
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#1 | #1 | 20+(パリティ2、ホットスペア2) | 360GB |
#2 | #2 | 20+(パリティ2、ホットスペア2) | 360GB |
#3 | #3 | 12+(パリティ2、ホットスペア2) | 216GB |
#4 | 6+(パリティ2) | 108GB |