富田 浩文 (理化学研究所)
先日、理化学研究所の「京」コンピュータがLINPACK性能で世界一位を獲得した。93%という極めて高い実行効率である。これは「京」コンピュータの潜在能力を示す一つの事例であるが、一般のアプリケーションでここまでの性能を出すのはきわめて難しい。特に気候計算での力学過程で用いられるような格子点法の場合、メモリロードストア量に比べて、実際の計算量が相対的に少ないため、今のスカラーコンピュータは決してバランスの良いものではない。キャッシュの有効利用が一つのキーであるが、力学部分の高速化は根本的にメモリ性能できまるといってよい。一方、雲、放射などの物理過程は、メモリロードストアに対して力学部分よりははるかに計算量が多く、今後もこの傾向は続く。
エクサスケールの時代のコンピュータアーキテクチャは、いまだ co-designの段階であるが、メニーコア時代が到来し、相対的なメモリ性能の悪化は避けられない。本講演では、「京」コンピュータ、ポストペタコンピュータ、エクサスケールと拡大するコンピュータ環境で、どのようなサイエンティフィックな課題に取り組めば最も効果的かを考察してみたい。
気候モデル、エクサスケールコンピューティング