News Letter「ネットワークセキュリティと紛争処理」(8/8)

  目次   |   先頭   |   前へ   |   次へ  

 
3. 紛争処理の可能性と現実性 専門家ADRの制度を確立すること
 
最後に「紛争処理の可能性と現実性」ということでありますけれども、私は今日、大変多くの専門家がいらっしゃるので、是非ともこれを最後にまとめとしてお話ししたいわけですが、専門家の運営するADR(Alternative Dispute Resolution : もう一つの紛争解決手段)、もう一つのとは、司法作用いわゆる裁判という以外の調停、斡旋、あるいは何らかの評決をする様な仕組み、これを是非作りたいということであります。

それを邪魔しているものとして弁護士法第72条といのがございまして、弁護士以外は弁護士活動しちゃいけないという訳です。 そうしますと、侵害者がいる、被害者がいる、その間である一定のルールを決めて行こうという裁定をする行為は、権利の対立を調整するための法律的な行為だと豪語している人たちが一部いるわけです。 そういう人たちが自分のテリトリーをやくざが如くに守ろうとするわけです。 それが弁護士法72条という規定で、これに反する者は信託銀行であろうと、司法書士の先生であろうと、税理士であろうと、はじき飛ばすというテリトリーを作っているのです。

私はこの規定は撤廃すべきだと思っていますし、弁護士会の中にもこれはいらないと考えている人も出てきています。 この規定が邪魔になって専門家が専門的知識を利用して評議員になる、判定員になる、ということが現段階で出来ない状況となっています。 ですから、是非この条文を改正して、ある種私達の様な権利関係にずっと経験を積んできた人間と、技術的な側面あるいは科学的な側面を充分理解している先生方と、あるいは専門家の皆さんと、同じボードについてその侵害行為が違法行為なのか適法行為なのか、この被害はどうしたら守れるのか、ということを徹底して議論して、ルール作りをするという、司法とはまた別の(司法は証人尋問して権利関係明確にして国家としての判決をする、という大変重要な機能があります。)、もっとスピーディな世界で技術的なことも踏まえて今の様な議論をする場面が必要なのでしょう。 そういうものをADRとして作っていく必要がある。 こういったことを我々が意図的に進めていかないと駄目だ、ということであります。

大変面白いのは法務省も裁判所もADR構想については賛成なのです。 なぜならば、司法当局がこういうネットワーク犯罪を見事に切り裁けるかというと、裁けない、というのは彼らが一番良く判っているのです。 ですから、もっと的確に前に進まなければいけない。

アメリカで言う前提的仮処分というのでしょうか、仮処分かけたら3日で結論が出る、こういう時代でないと対応できないわけです。 日本の様に仮処分かけて2ヶ月後に審尋が入り、審尋の結果が大体6ヶ月後です。 6ヶ月間もあればソフトウェアの生命は終わってしまいます。 6ヶ月間で仮処分すらも出ないということになると、これはもう機能不全ということになります。 そうしますと、前提的仮処分が出る様な、あるいは一定のルールが決まる様な、そういう仕組みを作らなければいけない。 これがこれからの紛争処理の眼目になるのではないかと思われます。 政府もその方向を取りたいと考えておられるわけであります。 これに頑に抵抗しているのが我々弁護士ということでございますので、まあ袋叩きにして頂きたい。(笑) それで何とかADRを作っていかなくてはいけない、ということだと思います。 大変過激な発言を致しました。

とりあえず私のお話しはここまでにさせて頂きます。(拍手)

©Jiro Makino 2001

  目次   |   先頭   |   前へ   |   次へ  
 
All Rights Reserved, Copyright© サイエンティフィック・システム研究会 2001