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2-2-2. 構造予測コンテストCASP


画面20

 当時、3D-1D法が非常に反響を呼び、多くの研究者が「これはいけるぞ」ということで、我々も含め、いろいろなグループが予測法の開発に参入した結果、いろいろなバリエーションの方法論がでてきました。それではどのグループが一番よく当るのかということで、全世界レベルの「タンパク質構造予測コンテスト(CASP)」が1994年から始まりました。以降、2年ごとに開催されています。このコンテストの一番の特徴は、インターネットを活用した完全なブラインドテスト (blind test:盲検法) であるという点です。参加者に対し、問題となる何十題ものアミノ酸配列(勿論未発表のもの)が電子メールで送られてきて、その構造を、問題ごとに設けられた期日以内に予測し座標データを送り返す、そして予め選定された審査員がそれを評価し順位を決めるというシステムです。ブラインドテストですから非常に厳しく、下手すると自分たちのグループの順位が悪く恥をかく、ということにもなりかねません。
 我々もこのコンテストに参加しましたが、うまくいった例をお見せしましょう。画面21をご覧下さい。


画面21

 左側のT0053が問題として出されたもので、勿論問題としては配列しか知らされていませんが、我々のグループは、先ほどご紹介した3D-1D法により、既知構造の中の1ak1に似ているだろうと予測し回答しました。結果は、ご覧の通り確かによく似ているので、この場合は花丸をもらったわけです。
 しかし、全部がこのように正解するとは限らず、間違えることも多くあり、この方法では全体の5割が正解すればよいという状況でした。ですから、3D-1D法とは、確かに構造予測として使えると公認はされましたが、予測の「性能」という点ではあまりよくないことが、このCASPのコンテストにより非常にクリアに判ったわけです。


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