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2.機械は意識を持ち得るか(人工知能の限界)?

     しばらくして、この種のロボットを作るのに疑問を感じ始めた。賢いロボットが出来上がったと思っていたのだが、賢いのはプログラムを開発した人間であって、ロボットは、「どうすれば、うまくいくのか?」を考えているわけではないし、「うまくなろう」と思って学習しているわけでもない。人間が作ったプログラム通り動けば成功率が上がっていくだけの話である。では、「うまくなりたい」というような意識あるいは意志をロボットに持たせることができるのか?
     現在のコンピュータやAI(人工知能)の技術では当分は無理であろうと考えた。途方に暮れていたときゴキブリを見た。昆虫は、ほとんど反射と本能で行動は決まっているという。にもかかわらず、ゴキブリは、オドオドしながら出て来るように見えるし、もの音を聞くと、大急ぎで冷蔵庫の下に潜り込んで、人がいなくなったらまた出ていってやろうという顔をして、触角をピクピク動かしてこちらを見ている。複雑なプログラムで制御されるロボットには決して感じられなかった生き物らしさ、生命感というものを感じさせてくれた。そこで、昆虫を規範としてロボットを作ってみれば、意識とか生命感を人工的に作り出すための方法を見つけるための一つのきっかけになるのではないかと考えた。また、図1は、動物の進化を簡単に示したものであるが、これまでは、知能ロボット研究といえば、右側の最先端である人間を目標に進めて来た。しかし、図で見るように、昆虫も進化の最先端である。これを目指すロボティクスがあってもよいわけで、それを昆虫規範型ロボティクスと名付けたのである。最上段の数値は、昆虫と人間の脳細胞の数であるが、100億個は無理としても、10万個なら人工的に作成できる可能性は無くはないと考えたのも、これを始める動機となった。

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