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    5.10.長野県田中知事とその政治

     作家の田中康夫さんが長野県知事になり、脱記者クラブ宣言*7を出しました。インターネット時代には、ひとりひとりが表現者で、ひとりひとりが情報発信できる、表現者みんなに情報を公開するべきで、記者クラブだけに情報を渡すのはおかしいということで宣言を出した。
     今年の9月に取材に行きました。ガラス張りの知事室はテレビでも報道されましたが、実際に行ってみると確かにビックリする。1階の部分が県民ホールになっていて、その一角にガラスがはめられている。ガラスと言っても、洒落た1枚ガラスというわけでもなく、無骨なガラスがはまっているだけです。そして、その中の知事の部屋を見ると、古めかしい机と椅子がポンと置かれている。秘書室の人に聞くと、倉庫かなんかに眠っていたものらしい。さらに驚くのは、知事室一面に縫いぐるみが転がっている。幼稚園の部屋をガラス張りにして閉じ込めたような感じで、テレビで見てはいましたけれども、実際に見るとやはり驚きます。一体なぜこのようなことをしたのかと思います。
     田中知事をもうひとつ有名にしたものに脱ダム宣言があります。長野県は、ダムという形での公共事業はできるかぎりやらないと言った。では、県はどのような仕事をやるのかというと、田中知事が考えているのは、ひとりひとりの県民から出てきた要求を活かしていきたいということらしい。
     長野県では「『県民のこえ』ホットライン」*8という試みをしています。インターネットとかFAXで、県民の要望を受け付けている。図書館で車椅子が通りにくいから何とかしてくれとか、バスの停留所にベンチがないから何とかしてくれ、あるいは、道路の段差を何とかしてくれという要望にたいして、1週間以内に返事しますといったことを言っている。
     そうした県の活動にたいして、「ホットラインはつながっているか?」*9というサイトを作った人がいます。このサイトは、ホットラインがちゃんと機能しているかを検証したいので県とのメールでのやりとりを送ってほしいと呼びかけ、サイトで公開しています。このサイトを見ると、実際にどのような状態かわかります。県は、たんに要望を聞くだけでなく、さまざまなクレームにもそうとうに忍耐強く対応していて、いよいよ収拾がつかなくなると、「知事が直接連絡をとりたいと言っているので電話番号を教えてください」とメールを出したりしている。私が見たかぎりでは、そういったメールが届くと、厳しいクレームをつけていた人もさすがにビックリして連絡先を教えた人はいないようでした。
     ともかく、県民の声をなんとかくみ上げていく仕組みを作りあげ、地方自治のあり方、政治のあり方を変えたいということなのでしょう。


*7:http://www.pref.nagano.jp/hisyo/press/kisya.htm
*8:http://www.pref.nagano.jp/hisyo/hotline/top.htm
*9:http://nagano.cool.ne.jp/hot_line/

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