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2.ネットワーク技術が進む方向

    【平木】(東京大学理学部)
     高速ネットワークへの取り組みを考えるときに、技術がどの方向に進んでいくかということを正しく認識することは非常に大事なことだと思います。武市取締役のご報告の中のにもありましたが、ギルダーの法則が永遠に持続しないことは明らかで、いつまでこの法則が持続するかが将来を考える上で非常に重要と思います。ご報告の中の図には2005年まで書いてありますが、この法則はせいぜい2005年までで、2005年からはもう伸びなくなるのか、それとも2010年まで生き残るか、その見通しについて、どうお考えなのでしょうか。

    【武市】(富士通 取締役)
     大変難しいご質問ですね。ムーアの法則は、何度ももう成り立たないのではないかということが言われてきまして、その度にブレークスルーがありました。そして結局、これは20年以上続いてきている訳です。しかし、ギルダーの法則は、過去の事実の時間軸が短いので、そこから導かれる外挿としての将来予測が本当に成り立つかどうかの確度はムーアの法則のそれよりも低くなるのではないかと思いますが、2005年までは確実に持続するだろうと思いますし、その後も暫くの間は、持続するのではないかと思います。しかし、波長を積み上げるといっても限度がありますので、早晩成り立たなくなるだろうと思います。それが何年かというピンポイントは少し難しいと思いますが、1.7テラビットとか2テラビットというのが、5テラビットくらいまでいくのか10テラビットくらいまでいくのか分かりませんが、波が1000波、重なるくらいというのが、ひとつの限界点ではないかと、私は専門ではありませんが、それくらいが目安ではないかと思っております。

    【平木】
     実は今のお話というのは、非常に重要なことを意味しています。先ほど示されました ギルダーの法則の図をそのまま延長していきますと、2010年には、1エクサビットのネットワークができることになりますが、多分それは全くの嘘になるわけです。それを実現するための方法には、今の波長多重だけでなくて、例えば振幅方向があります。しかしその基礎研究は、10年では実現できないような研究でしょう。ムーアの法則は、1つのチップで成り立っている訳ですが、これを関口先生、森田先生他が進めています並列の技術で考えると、2010年でもムーアの法則の延長が成立しているのではないのでしょうか。そのようなフレームワークで考えないと少し違う結果を見ることにならないか、というような印象を持っています。これについて、どのようなご意見をお持ちでしょうか。

    【武市】
     コンピューティングも一台のチップだけで巨大なコンピュータが実現できるのではなくて、やはりあるコンプレックスを作って、その中での相互動作で大きな処理能力を実現していく格好になると思います。ですから、そのギルダーの法則というのが、1本のファイバーだけに着目して、キャパシティが伸びていくようになっていくのだと思いますが、むしろ伝送路の方も、ある全体のネットワークの疎通能力というような観点からパラメータを少し捉え直して能力尺度にしていくのではないかと思っております。ですから、どちらが速いかという競争を、どのポイントで行うかということにあまり深入りしても、それはプロダクティブではないのかもしれないかなというような気がしております。いずれにしても相互に競い合って、ギルダーさんが永遠に楽しくないかも分かりませんが、トラフィックに沿った格好で何らかの協調動作をしていくことだろうと思います。


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