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3.巨大産業への発展

     21世紀のハイパーインフラとして高高度飛行体を利用したサービスは、従来型の方法論が直面している「ラストワンマイル」を打開するものとしての期待が高まる。なかでも通信中継、モバイル、放送中継の分野においてドラスティックな変化をもたらすものとして注目されている。通信中継ではFWA(加入者系無線アクセスシステム)・高速インターネット、モバイルではIMT−2000、そして放送中継においてはデジタルTV、とそれぞれへの応用が可能であり、通信と放送の融合という流れを促進させることであろう。
     世界に目を向けると、高い電話回線敷設コストが障壁となり、いまだに電話回線が敷設されていない地域が数多くある。こうした地域において高高度飛行体を使うことにより、電話回線を敷設するより大幅に低いコストで、直ちに無線通信を行うことが可能となる。
     状況は違うが、これはわが国に関しても同様の事が言える。光ファイバを日本全体に敷設する場合、利用者数の少ない地域では敷設コストと比較して効率的ではない。
     一方、高高度飛行体を使い、主要都市では光ファイバとの併用で有線・無線双方の高速ブロードバンドネットワークサービスを提供でき、人口が分散している地域では高高度飛行体によるワイヤレスブロードバンドサービスが提供できるというような、柔軟かつ効率的な利用も可能となる。
     さらには、気象観測、地表観測によるリアルタイムマップ、ナビゲーションシステム、位置情報サービス、次世代ITS、災害時の監視などにも有効利用できる。車両間情報通信によって自動車の自動制御・運転を実現させるITSへの応用にも大いに期待が膨らむ。その他、機体・太陽電池・燃料電池技術の研究開発により、さらなる多目的利用法も考えられるであろう。特に、太陽電池と燃料電池を使ったクリーンエネルギーは今後の技術革新により、発電効率の向上、機器の小型化・低価格化が実現すれば各家庭において電力の自給自足が可能となる。
     このように多方面への利用可能性を非常に秘めた高高度飛行体は、わが国のIT技術の発展のみならず、産学官を巻き込んだ一大産業への発展を予感させる。そして、高高度飛行体による無線ネットワークが現実に構築されれば、多くのビジネスチャンスが生まれるとともに、21世紀型IT社会の幕開けとなるであろう。

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