ハイパーメディアコンソーシアム 理事長 矢田 光治 yada@hicom.co.jp
1.高高度飛行体(ソーラープレーン) 21世紀の幕開けに相応しい、全く新しいテクノロジーによるプラットホームの概念が萌芽しつつある。 高高度飛行体(ソーラープレーン)を静止衛星のように使用し、無線による通信・放送インフラを構築しようという動きである。これは通信・観測機器(監視カメラ・センサなど)を搭載した無人の飛行体を比較的気象状態が安定している高度2万mの成層圏に長期間滞空させ、静止衛星のように無線プラットホーム(中継基地)として利用しようとするものである。 すでに米国においては、NASAからの技術援助を受け、エアロバイロメント社(AeroVironment Inc.)がソーラープレーン"ヘリオス(Helios)"の開発を進めている。同社が開発した太陽光発電による全翼機としてヘリオスは4代目に当たるが、2代目のパスファインダープラス(Pathfinder Plus)は、すでに高度約24,461mの成層圏に到達し、実用化へ大きく前進したことを証明している(1998年8月)。そしてヘリオスには高度2万mで6ヶ月以上の継続飛行という目標が設定されている。全長約86.5m、重量約600sと極めて軽量なヘリオスは、機体上部の表面が全て太陽電池で覆われ、太陽光線を効率良くエネルギーに変えて飛行する。 太陽光線からエネルギーが得られない夜間は、太陽電池から燃料電池による電力供給へと切り換える。この切り換えの仕組みは、昼間太陽電池によって作り出された余剰エネルギーをエレクトロライザー(Electrolyzer)と呼ばれる装置に蓄え、水を水素と酸素に電気分解する際に使用する。 電気分解により生成された水素と酸素はそれぞれ別々のタンクへと貯蔵され、太陽電池による発電が停止する夜間に燃料電池へと送られ、水と電力が生成されるという先程とは逆のプロセスをとる。こうして作られた電力が翌朝までのヘリオスの動力となり、24時間の飛行が可能となるのである。このような構造を持つ飛行体は、エネルギーの自給自足を実現し、地球環境にやさしい飛行を半永久的に続けられることになる。21世紀のテクノロジーとして世界中の注目を集める理由の一端がここにあると言えよう。