現在、 スポーツ科学分野、音楽・伝統芸能分野、人工知能分野、製造業をはじめとするものづくり分野等幅広い分野において、「見て学ぶ」技術/技能伝承手法が行われている。しかし、これらの技術/技能伝承手法には大きな課題がある。それは、暗黙知の所在である。暗黙知とは、ある個人の身体に染み付いているものや技能、長年の経験や勘、直観等に基づく知識で,言葉で伝えることが難しく、さまざまな分野でその解明が積極的に行われているが、その多くが「身体知 (個人が実際に身体を使って習得した知識)」に関する研究である。
暗黙知には「身体知」という視点以外に新しい切り口が必要ではないかと考える。例えば、ドライバーやくぎ打ちなどの技能/技術は「見て学ぶ」ことができるが、熟練技術者等が作業中,頭の中で行われる判断は、情報入手作業は見えるが頭の中で行われた判断作業は見えない暗黙知がある。そこに暗黙知を解明する糸口があるのではないかと推察する。
そこで、本WG 見えないもの(頭脳知)を見える化へは、 頭の中で行われる判断、情報入手作業は見えるが判断作業は見えない暗黙知を「頭脳知」と定義し、「頭脳知」の解明と見える化(形式知化:文章,図表,数字などによって説明・表現・共有できる知識)を試み、技術/技能伝承の障壁である暗黙知(身体知・頭脳知)の解明を図り、次世代への効率的・効果的な伝承システムの構築を目指す。
WG前半では、暗黙知(身体知・頭脳知)の解明、見える化に必要な手法、ノウハウや課題・要求を整理するとともに、暗黙知等の専門家をお招きして、WGメンバーの知見や見識を広める。
WG後半では、整理された課題・要求とのギャップを把握し、必要とされる技術、手法、ノウハウの検討、ならびに、暗黙知の解明手法の提案と技術/技能伝承の試作システムの構築し、実践検証を通してその効果を検証し、報告書にまとめる。
WGの活動期間全体を通じて、暗黙知(身体知・頭脳知)の解明手法の検討と見える化を進め、さらに試作システムの開発と開発おける失敗談などをまとめる。活動期間終了後に試作システムと暗黙知(身体知・頭脳知)の解明手法等を公開する。
本WGのアウトプットが、暗黙知(身体知・頭脳知)の解明と次世代への効率的・効果的な技術/技能伝承に関する検討の一助となることを期待する。