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3.ISTUの運用と課題

     現在、ISTUでは、25科目190講義を配信しているが(平成16年6月16日時点)、その運営は必ずしも順調とはいえず、結果的に、ISTUは東北大学の全研究科を対象としているが、全15研究科中、現時点で授業を配信しているのは5研究科にとどまっている[1]
     実際にISTUの運用を始めてみると、インターネットによる授業配信のためには、システム運用や授業コンテンツ作成のコスト、著作権管理、インストラクショナルデザインなど様々な課題が予想以上にあることが実感された[2]
     例えばコストに関して言えば、機器の維持など資金的な面でも多額の費用がかかるうえ、コンテンツ作成のために個々の教員にかかる負担やシステムオペレーション、各種問合せや不具合発生時への対応など、人的労力も多大である。特に、インターネットによる授業配信を大学が提供するサービスの1つであると捉えると、年末年始や夏期休暇期間、夜間などのサポート体制をどうするかが課題となってくる。
     また著作権管理に関しても、一般的にもよく取り上げられている他者の著作物の利用における問題に加え、自分達が作成した著作物の著作権の問題がある。すなわち、大学での授業配信用に作成した授業コンテンツの著作権は、教員と大学のどちらにあるのか、という問題である。これは、どちらにあるとも解釈できるものであり、実際には、コンテンツ作成とその利用が推進されるようバランスのとれた規定を定めることが必要であり、東北大学においても、現在、その規定作りを進めているところである。
4.まとめ
     このように解決すべき課題も多いISTUであるが、日本国内の総合大学における全学的なe-Learningの取り組みの最初の事例として、注目すべき点も多い。ISTUの発展、継続のためには、これらの課題を解決していくことが必要であり、これは高等教育へのe-Learning導入に共通の課題と言えよう。今後、これらの課題を1つ1つ解決し、1つのモデルケースとして日本のe-Learningの発展に寄与できることを切に願うところである。


[参考文献]

[1] 三石 大,岩崎 信: 東北大学インターネットスクールの実践と課題,教育システム情報学会第29回全国大会講演論文集, pp.129-130 (2004)
[2] 三石 大, 熊井 正之: ISTU: 東北大学インターネットスクール, 電子情報通信学会誌, Vol.86, No.11, pp.816-820 (2003)


[略歴]

1998年,東北大学大学院情報科学研究科博士課程後期修了.1998年より岩手県立大学ソフトウェア情報学部助手として,分散アプリケーションのアーキテクチャ,データベース検索技術等の研究に従事.2002年より東北大学大学院教育情報学研究部助教授として,情報技術の教育応用ならびにそのための情報技術の研究開発に従事するとともに,ISTUの立ち上げ,運営に携わる.

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