東北大学大学院教育情報学研究部 三石 大 takashi@ei.tohoku.ac.jp
1.ISTUの概要 2002年に発足した東北大学インターネットスクール、通称ISTU(Internet School of Tohoku University)は、東北大学大学院の授業科目をインターネットで配信、受講するための枠組みであり、またそのための仕組みを提供するものである。 ISTUでは、発足の当初から、一部の研究科だけではなく、東北大学の全15研究科の授業科目を対象としている点に特徴がある。これにより配信される授業科目は、各研究科で開講する正規の授業科目であり、またこれを受講する学生も各研究科に所属する正規の学生である。すなわち、東北大学の大学院で開講される授業科目の一部をオンラインでも受講できるようにするものである。 このISTU発足の経緯は、2000年8月に東北大学で開催された、21世紀の研究と教育に関する国際シンポジウムでのフォーラム宣言第7項(1)、にある。すなわち、ISTUは、情報処理技術、情報通信技術等のITを活用することにより、スクーリングが困難な学生などに対し、東北大学による教育機会を拡大することをその大きな目的の1つとしている。 (1)ISRE2000フォーラム宣言第7項:「我々は,情報技術の進展に呼応し,国際的な遠隔教育(サイバースペース・ユニバーシティなど),生涯学習,特別な援助を必要とする人々への配慮を取り込み,時空間の拡大に対応した組織を大学の一部機能として拡充することを検討し,そのシステムを世界的に広める努力をする」 2.ISTUのシステム ISTUは、構想から実施までが極めて短い期間であった上に、東北大学内におけるこれまでのe-Learningの実績も少なかったため、十分なベンダーサポートによる迅速なシステムの立ち上げとその運用が必要であった。また、現在の情報技術の急速な発展や、今後のe-Learning の発展だけでなく、ISTUは文理を問わず全研究科を対象としており、各研究科の多様な授業形態にも柔軟かつ簡便に対応できる必要がある。その結果、既存システムやツール類を最大限に利用し、また、十分なスケーラビリティを確保しつつ、標準規格、技術へもできるだけ準拠することが検討され、以下のようなシステムを導入した。 図1:ISTUによる受講画面例 ISTUでは、図1に示すように、スライド資料と講義画面からなる授業コンテンツをwebページの形で配信する。そのためにISTUのシステムは、webページを提供するwebサーバ、授業科目の配信とその受講管理のためのLMSを提供する講義配信・受講管理用アプリケーションサーバ、動画ストリーミングによる授業映像を配信するためのストリーミングサーバ、授業コンテンツを作成するための講義作成用PCからなる。これらのシステムは、東北大学内LANであるTAINS/Gを経由してインターネットに接続されている。以上のシステムの基本構成を図2に示す。 またソフトウェアとしては、LMSとして富士通社製の企業向けe-LearningシステムであるInternet Navigware を大学用にカスタマイズしたシステムを使用し、講義映像配信用の動画ストリーミングサーバにはリアルネットワークス社のHelix Universal Serverを使用している。また、配信用講義データの作成には、デジタル・ナレッジ社のSeminar Now!、レイル社のLiveCreator等を使用している。