News Letter「ドメイン名と紛争処理の現状」(17/17)

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ルートサーバ(DNS)の構造は、1番上にルートサーバが全世界に13台配置されていて(そのうちの1台は日本にある)、その13台にトップレベルドメインが登録されていて、それぞれのトップレベルドメインのネームサーバの場所をポイントしている。 従って、新たにトップレベルドメインを追加するためには、ルートサーバにトップレベルドメインの文字列が追加されなければ始まらないということになる。

前述した通りGTLDが7つ、CCTLDが240強あるので250強のトップレベルドメインがルートサーバに設定されていて、一意性を保証している。 このルートサーバの下の階層を見ていくとCOMやNET、今始まっているBIZがあり、このあたりがGTLDである。 COMの下にSUNというドメインがあると、"sun.com"という登録ドメイン名ができる。 それからもう一方でCCTLDがあり、JPをはじめとして240強のCCTLDがある。 JPの場合には今までのスタイルでいうと企業をあらわすCOがあり、富士通であれば"fujitsu.co.jp"というものが一意で定められるという形になっている。

今問題になっているのは、黒で示している部分。 Alternate rootsの中でも2パタ−ンある。 1つ目は、別のル−トを勝手に立ち上げ、勝手にトップレベルドメイン名を作り、ICANNがオーソライズしているドメイン名空間にアタッチする。 すると、自分たちの空間の方が広くなる。 例えばORSCというグル−プが".biz"を勝手に作り、ICANNの既存ドメイン名空間に全部連動させる。 すると、ORSCが管理しているルートは、今認められているトップレベルドメインと、自分が勝手に追加したトップレベルドメイン名の両方の空間ができてしまう。 Pacific Rootというのが別にあるがこういう別ルートを勝手に始めているところが、今分かっているだけでも6つ7つぐらいある。 もう1つは、New.netという会社がアメリカで今ビジネスを開始している。 この会社は、自分たちで独自にルートサーバ的なものを作り、下にサブドメインとして"shop", "kids"という名前を作り、ユーザに特別なプラグインを配布する。 そのプラグインを使うと、New.netを省略した形でドメイン名空間が見られるという仕組みになっている。 既存のものは今まで通り見られるが、それ以外にNew.netが提供している".KIDS"や".SHOP"もトップレベルドメイン名のように見える。 そういう意味では先程のグループと同様に、新たに別ルートを作って自分で勝手にトップレベルドメインをどんどん増やしているという現状になっている。

何が問題か。 1つは、ドメイン名空間は必ずユニークネスを保たなければならないというポリシーの基にICANNが進めてきたのに、勝手にルートを立ち上げて自分たちの空間を作ってしまっている。 まず手続き的な問題、更にもっと大変なのはトップレベルドメイン名が重複してしまうと、ドメイン名空間がある意味分断されてしまう。 具体的に表面化しているのは"BIZ"というドメイン名。".BIZ"がICANNで新たに追加されたが、alternate rootsの方で既に".BIZ"が勝手に追加されていたという問題になっている。 alternate roots自体は数年前から存在し、今始まった問題ではないが、今具体的にぶつかる問題である。 もう1つは、New.netというのは非常にお金をかけて大きなビジネスとして動いているもので、今まではalternate rootsと言ってもICANNのやり方に反対だから自分たちが勝手にやる、ということでそれほどビジネス的な動きではなかった。 そういう意味ではビジネス的な動きが出てきたので今大きな問題として話題になっている。
 

©Copyright 2001 by Toshihiro Tsubo

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