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6. おわりに

 原研計算科学技術推進センター情報システム管理課で実施している原子力コードの高速化作業は、毎年十数件を順調にこなし、平成9年度に14件の作業を、平成10年度には9件の作業を完了し、平成11年度にも14件の作業が計画されている(VPP500,VPP300,一部AP3000)。これら作業は、ユーザからの要望に応じ、原子力コードを 各種スーパーコンピュータ向けに最適なベクトル化、並列化を施すチューニングを行うものであり、コード実行時間の大幅な短縮に寄与している。さらに、単一プロセッサ上ではメモリ不足から実行できないようなジョブを並列化効果により可能にするなど、計算機のスループットの向上、ターンアラウンドタイムの短縮、それによるユーザの仕事の効率化、計算可能なジョブの範囲の拡大など、計算機の効率的な運用と計算機資源の有効利用に大いに貢献するものと考えている。
 本報では、原研における原子力コード高速化への取り組みの現状を、高速化プログラミングの具体例(非線形フォッカープランクコード)を交えて紹介した。チューニングによる高速化効果はいずれのコードにおいても顕著であり、計算機資源の有効利用につながっていると推察されるが、こと「並列化による効果」と言う観点から見れば必ずしもそうとは言えない部分もある。並列処理は、基本的に複数のPEを利用することにより高速化をねらうものであり、多くのPEが利用可能でなければならない。ユーザ数が多く、その利用が多岐に渡る利用形態においては、シングルジョブや他の大型ジョブとの兼ね合いで、PEそのものが利用できない「待ち」状態であることが多い。これはジョブクラスの運用方針に依存するものであるが、ターンアラウンドタイムからすればシングルジョブの方が、高速化された並列ジョブよりも早い場合もある。トータル的に見て、本当の高速化がなされているかどうか、という点では疑問が残る。また、並列ジョブ実行時にはどうしてもPEの利用率の低下(占有しているが実際に動作していない状態)が発生する。計算機の効率的な運用という点からも十分に考慮しなくてはならない問題である。これらの事を見極めた上でのコード選択、高速化が重要ではあるが、根本的な解決のためには、効率的で柔軟な並列ジョブクラスの運用が可能な計算機システムの出現が望まれる。


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