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8.笑いと人間関係

 笑いは人間関係を作っていく時にも非常に重要だという話をしました。つまり、人間は仲間と共に仲良くしないと生きられないの です。気に入らないヤツがいっぱいいても、大事な関係と言うのは、仲の良い関係を維持しないことには一人では生きられないとい うことです。そのことに私は笑いが関係していると言いました。
 人間は笑顔が大事です。笑顔というのは皆それぞれに自然に出てくるのですが、この笑顔の持っている意味というのはものすごく 大きいです。笑顔は人種民族問わず人類は皆持っています。不思議と持っているのです。笑顔は何を意味するのかと言うと、戦わな いということです。喧嘩腰に「やるか!」という時に、笑顔を示すともう戦う力が失せてしまいます。これは不思議だな、と思うの ですが、共通のサインとして通用するのです。ですから言葉が不自由であるところへ出かけても、何かあった時には笑顔で対応した 方が良いのです。真面目な顔をして目を輝かせて物言っていると、もちろん言葉は通用しないですから緊張が走ります。しかし笑顔 があって話していると、緊張は溶けるものです。そういう意味でまずは戦いません、敵意を持っていません、そういうサインとして 通用しているということです。これは誰が決めたということはなく、基本的には戦わないで生きて行くという人類の約束事ではない かと思えます。
 また笑顔は発展して、歓迎しています、好意をもっていますという意味になります。例えば、店に入って「いらっしゃいませー」 などと言葉はきれいに聞こえても、パッと顔を見たら全然笑顔がないと、あの人怒っているのかなぁ、と思ってしまいます。です から初対面の応対というのは、非常に笑顔が大事で、これは本当に世界共通です。笑顔は好意を持っている、歓迎している、という ことを示しているのです。
 それから一歩進んで、笑顔で色々な意味を送る、感謝の言葉、ありがとうと言葉に出して言わなくても笑顔一つで感謝を示すこと もあります。笑い学会の会員で、お母さんの介護をしている人の話ですが、介護はとても疲れますが、そのお母さんがニコッともし ないそうです。どんなに世話をしてあげていてもニコッともしてくれないのだそうです。娘さんですから自分の母親ですので介護は しますが、笑顔一つくらい見せてくれたらどうか、そうしたら私の疲れも一度に吹き飛ぶのに、と娘さんは言っておられました。笑 顔一つお母さんが見せれば娘さんの疲れがパーッと吹き飛ぶのだと思います。そういう笑顔もあります。
 それから、これはある人から聞いた話です。初めてのパソコンを発注して、いつ持って来てくれるかと楽しみにしていました。 配達の日の朝からずっと家に居て待っていたのに届かず、そして夕方頃電話がかかってきて明日になるというのです。一日棒にふっ たことになります。ですからその主婦の方はカッカして、明日持ってきたら文句タラタラ言ってやろうと待ち構えていました。翌日 青年がパッケージを運んで持って来てくれたのですが、その時にその青年の見せてくれた笑顔がすばらしく、青年の笑顔に惹かれて しまって自分も笑ってしまったということなのです。文句タラタラ言おうと思っていた言葉が喉で止まってしまい、怒れない、と いうことになってしまったそうです。笑顔が怒りを抑えてしまったというわけです。ですから色々な場面で笑顔が持っている意味を 考えると、コミュニケーションとしても大変面白いものがあると思います。
 それからもっと進んで二人で笑い合ってワハハという場が持てるととても良いと思います。笑い合えるということは、距離が近く に取れるということです。今までなんとなくあの人とは距離があるなと思っていても、ちょっとした冗談でワハハと笑えた、笑いの 感情が共有出来た、という時には距離が近くなっています。ですから、初対面の人でも本当に意気投合してワハハと笑って、いざ別 れる時になったらあの人と今日会ったばかりなのに、なんか長年の付き合いのような気がしたりします。笑いは間にある距離を飛ば してくれる作用があります。


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