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5.いろいろなのGRIDのイメージ

    【松澤】
     これから討論に入ります。私は、技術的なところを中心に討論したいと考えております。
     今、関口さんのお話にありましたように、ネットワークで様々な計算機資源を共有することをGRIDと呼ぶという考え方と、様々な計算機資源の共有をGRIDで作るというのでは大きな違いがありますよね。例えば、水本さんが質問されたように大規模なデータ解析システムをGRIDだと言うと、いわゆるポータル、すなわち入り口の部分だけなんとかすれば、GRIDになるとの考え方もあります。あるいは、もう少し積極的な絡み方で、共通な基盤を作り、そのような解析システムを作ろうという考え方もあると思います。この点について、関口先生はどのようにお考えですか。

    【関口】
     非常に難しいご質問ですね。幸か不幸か、GRIDという言葉がいろいろな意味で使われてしまっています。
     「GRIDで作る」という言い方は、先ほども若干お話させていただいたように、共通のところのミドルウェアをベースに考えていくというのが、漠然とした言い方で「GRIDで作る」ということかなと思います。ただ、使うことができるツール群は、今のところ、そんなに沢山はありませんので、ある意味、どうしても一番下のところから自分たちだけでかなりの部分を作らなければいけないというところはあると思います。それがその「GRIDで作る」ということです。
     そして、もうひとつの呼び方ですが、あるひとつのポリシーなりで運用されているネットワークのかたまりとそこにおけるリソースをGRIDと呼んでいただいてもいいと思います。もう少し厳密に言いますと、我々はこれをテストベッドという言い方をしています。さらに、もう少し形容詞をつけて、キャンパスGRID、あるいはバーチャルラボというように、あるひとつのポリシーで運用されているようなところまでを含めて、GRIDと呼んでもいいのだろうと思います。ただ、そうしたときには、それと別のものとをどのように統一的にfederateしていくか、そのようなinter GRIDのプロトコルも含めて、どうやって共通化していくかが次の課題になってくるかなと思います。
     もうひとつのご質問は、森田さんの方がいいのかなと思いますが、ポータルというのもひとつの見せ方です。ただ、それが全てではなく、当然その裏側に様々なインフラがあり、それをどのように作っているかだと思います。単にポータルだけ整備して、他の後ろ側は今までと同じというのも、ある意味では、現状の基盤からシームレスにつないでいくひとつの方法だと思いますが、多分それだけでは済まないでしょう。やはり次のフェーズで、バックエンドにきているものも、それなりに共通の、ある意味ではGRID的な作り方をしたものが、当然入ってくるのではないかと思います。そのような意味で、ポータルだけですかと言われると多分NOであると思います。当然共通基盤を含めて、そこはポータルを含めた格好で、もう少し柔軟な作り方ができてくるのではないかと思います。

    【森田】
     多分、皆さんはそれぞれにGRIDに対するイメージをお持ちだと思います。私が考えるGRIDは、Webの場合と比較するのが適当かどうか分かりませんが、Webはhttp、あるいはhtml、urlと、中心になるものに非常に分かりやすい標準化のモデルがあり、それが世の中の情報交換に対する需要と非常に良くマッチしているのです。今現在のWebの使われ方を見ているとそれこそ、プロバイダと契約した個人が、Web上にアルバムを載せて友達に見せたり、日記を書いてみたりという使い方から始まって、e-コマース等のオンラインショッピングみたいなものにもに使われています。そのWebの使われ方は非常に幅が広いわけです。この中心になっている考え方が先ほどのhttp、html、urlというはっきりした技術の標準化であり、これがWebの果たした一番の功績じゃなかったかと思います。それと同じことが今GRIDで起こりつつあると私は理解しています。先ほど、CORBAとGRIDがどう違うかという話もありましたが、私にとって見たら、それは標準化されさえすれば同じもので、それはCORBAという今までの技術の発展をGRIDという新しい概念のもとで捉え直したもののひとつではないかと思います。
     高エネルギーのように、世界的にサイトをまたがって計算を一緒にやっていかないといけないという観点から見ると、認証の問題、セキュリティの問題というのは、やはり大きな問題です。このようなところで、標準ができて世の中に広まっていくことが、我々高エネルギー分野の人間にとっても、実は非常にありがたいことなのです。Webと同じようにGRIDが立ち上がるときに、実際にはいろんな問題があるのではないかと思いますが、標準化されれば、それは世の中、どこでも使えるようになるだろうし、その使われ方というのも、やはりWebがいろいろな用途で使われているのと同じように、我々の想像もつかないような幅の広い使われ方がするのではないかと思っています。

    【松澤】
     小山田先生、いかがでしょうか。

    【小山田】
     GRIDに関して、まだそのイメージが分かっていないのですが、そのようなコンピュータリソースをいろいろなところから等間隔でアクセスできるような環境で、可視化がどのようになっていくのかを考えてみました。それが大掛かりなものを使ったようなものであるとすれば、やはりセンターみたいに、物理的に集約された場所が意味をもってくるのだろうと考えております。私はたまたま、センターにいるわけですが、このセンターのようなコンピュータリソースが集中化されたところでコンピューテーションパワーを提供する。あるいは、ステアリングやアイコンタクトをとることができるような可視化環境を提供するといったような、ひとつの貢献ができるのではないかなと考えております。


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