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SS研HPCフォーラム2007「ペタスケール時代のコンピュータ技術」

閉会あいさつ

  村上 和彰
(九州大学情報基盤研究開発センター)

 本日は、朝10:30から長い時間、HPCフォーラムにご参加いただき、どうもありがとうございました。SS研科学技術計算分科会の担当幹事であります、村上でごさます。

 私は先ほどの講演にあったPSIプロジェクトのリーダーもさせていただいております。いくつかテクニカルなご質問をいただいておりまして、私が代わって答えてもよいのですが、富士通コンフィデンシャルな情報もございますので、やはり富士通の木村さんにきちんとお答えしていただくのが良いと思います。しかし一部の情報は、PSIシンポジウムで既に発表していますので、関連ホームページもご参照いただければと思います。(http://www.psi-project.jp/index.html)

 HPCフォーラムの閉会にあたりまして、少しお話させていただきます。今日は、マイクロソフトのBurton SmithさんによるHPCへの取組みの話、理化学研究所の姫野さんの文部科学省のスパコンの話、九州大学情報連携研究開発センターとしても興味をもっております、東大・京大・筑波大のオープンスパコンの取組み、それから非常に興味深く聞かせていただきましたが GPUを用いた取組み、最後にPSIプロジェクトの話と、非常に盛りだくさんの内容だったと思います。

 HPCの歴史は長いですが、いま新たな3つの局面に直面しているのではないかと考えています。
 ひとつはやはり、次世代スパコンへの取組みです。これは非常にチャレンジングなプロジェクトで、いろいろなご意見もあろうかと思いますが、やはり科学技術で立国していくための道具を、我々自身がきちんと作っていく能力を持たなければならない。どのようなかたちで持続するのかという面で議論もあると思いますが、単発の開発ではなくて、継続的にスパコンを作っていくプロジェクトを、我々HPC業界が持っているというのは非常に良いことだと思います。オールジャパンという言葉は誤解を生むかもしれませんが、産官学が一体となって、あるいは協力すべきところと競争すべきところをきちんと分けて、我が国の科学技術力を維持し、更に発展させていくということに、このプロジェクトを活用していくというのが、我々の課題だと思っています。

 第2点といたしましては、HPC業界は他の業界に比べますとそれほど大きくはありません。ワールドワイドの売上規模は、年間で1000億円から2000億円くらいであろうと思います。半導体業界が20兆円、PCも20兆円と言われておりますから、それに比べますと非常に小さな業界です。しかし、HPCはなくてはならない技術ですので、マーケットとしては大きくはないが、その中でどうやって技術開発を持続していくか、知恵を絞ることが大事です。次世代スパコンのようなナショナルプロジェクトも、その方法のひとつかも知れませんし、富士通や他のベンダーがやられているように、ビジネスベースできちんとまわるようなビジネスモデルを構築していくというのも、この業界に身を置く我々のひとつの課題だと思っています。
 本日の講演にもありました、GPUのような新しいテクノロジードライバーを使ってHPCのシステムを作っていくとうことも、常に考えていく必要があります。ご存知のように現在のテクノロジードライバーであるPCや高速なLANをベースとしたPCクラスタ、あるいはT2Kオープンスパコンという作り方が現在の主流かと思いますが、将来はGPU、あるいはシステムLSIといった、もっと数が出るところにテクノロジーがシフトしていきつつあるのだと思います。そういった技術をいかにHPCに使っていくかというところに知恵を絞らなければならないと思います。

 3点目ですが、大学に身を置く者として現在非常に危機感をもって捉えておりますのは、人材不足です。HPCという観点で見ますと、なかなかこの業界に大学の卒業生が育っていかない。ご存知のように18歳人口そのものが減っていますし、大学におけるコンピュータサイエンス、電子工学、あるいはコンピテーショナル サイエンス=計算科学を教えるところや学科の定員は、この20年間あるいは30年間ほとんど増えていない。私の専門は情報工学になりますが、そこでも学生定員はほとんど増えていません。最後のベビーブーマーを境に若干減っている傾向にあります。そうなると、これだけIT・コンピュータが使われる分野が広がっている中で、いかにHPCを志す学生を確保し、HPC業界に従事する人材を確保するかというのが、最大の課題であります。そのためには、HPCというのは他のIT業界と比べて非常にチャレンジングでエキサイティングな分野であるということを、我々が示していくのが、ひとつのあり方だろうと思います。そういう意味でも、このHPCフォーラムをSS研主催で毎年開催しておりますが、ますますこのフォーラムが盛んになり、若い学生に魅力的な分野であると思ってもらえるように、我々も努力していきたいと思っています。

 以上、簡単ではございますが、HPCフォーラムを閉会するにあたっての挨拶とかえさせていただきたいと思います。最後になりますが、SS研の皆さん、科学技術計算分科会企画委員の皆さん、このようなすばらしい企画を実施していただいたことに感謝します。
 それでは、本日はどうもお疲れ様でした、(拍手)


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