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[質疑応答]
2006年度合同分科会 「次世代のIT社会を予想する」 特別講演 次世代の扉を拓くX線FEL
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1895年にヴィルヘルム・レントゲンがX線を発見したが(1901年、第1回ノーベル物理学賞)、X線には物質を透過する性質があるため、当初から透視写真を撮影する目的に使用され、今日では最先端技術であるX線CT(Computed Tomography: コンピュータ断層撮影)が医療分野で日常的に使用されるまでになっている。 一方、1912年にマックス・フォン・ラウエがX線回折(X-ray diffraction)現象を発見しX線の正体が波長の短い電磁波であることを明らかにした(1914年のノーベル物理学賞)。また同時期、ブラッグ親子はX線回折による結晶構造の研究を開始し、1912年にブラッグの法則(反射条件)を発見した(父子で1915年度ノーベル物理学賞)。これに端を発して、X線を用いて、結晶構造を研究するX線結晶解析が発達し、後にはタンパク質の結晶構造解析へと応用され、今日の生命科学の基礎をなす重要な分野となっている。 このように、サイエンスの発展に伴ってその発生源であるX線源もまた格段の進歩をしてきた。レントゲンが実験に用いたX線管の時代から、1970年以降、加速器から発生する放射光が用いられるようになって、飛躍的に強度と輝度が高くなり、現代では、SPring-8をはじめとする、円型加速器による放射光施設によって極めて質のよいX線が安定に供給され、物質化学、生命科学、化学工業分野などの研究手段として広く活用されている。 さて現在の放射光よりさらに次の世代の放射光として脚光をあびているのが、X線FELである。つまり、X線波長でのレーザーであり、波の進行方向と位相がそろい、非常に強力なピーク電力を有しているため、数々の新しい応用技術が展開されるものと期待されている。特に、タンパク質の単分子構造解析がX線レーザーによって実現されるようになれば、生命科学の飛躍的な進歩に寄与するものと期待されている。 またX線レーザーのピーク強度が極めて高くなるため、X線の強電磁場による原子の励起現象など基礎物理学の研究も行われるようになるものと期待されている。 今回の研究会では、このX線FELとは何か、そしてそれを支える技術、さらに応用を含めてご説明いたします。 |
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