現在、多くの大学でICT (Information and Communication Technology)を活用した授業支援やe-Learningの導入が計画・実施されている。国立大学の法人化、少子化による受験生の減少、教科「情報」やゆとり教育を受けた学生の入学といった要因がこれらをどんどん後押ししている。さらに教育現場では、このICTを活用して、伝統的な一斉講義(教室での授業)を変革させようというトライアルも始まっている。この伝統的な一斉講義は教育効率/経済性に優れ、多くの大学で導入されているが、受講生が受身の教育となることや、dropout率が高い等の問題がある。同じ入学試験を突破してきたとは言え、高得点で合格した者とギリギリで合格した者との学力差、あるいは前提知識がある者とない者の理解度の差は歴然である。受講者の理解度は様々である。その様々な理解度レベルの受講者に対して講義で使用される教材は果たして共通なもの(一種類)で良いのかというのが本WG活動の出発点であり、それぞれの受講者の理解度レベルに応じた教材を提供することができれば、それがこの問題に対する一つの解となるのではないかと考え、研究活動を行ってきた。
e-Learningコンテンツ生成WG*2で行った大阪経済大学での実証実験*3では「受講者の授業の理解度レベルに応じた教材画面を選択できるこのシステムは集合一斉教育においての授業支援システムとして有効であると認められる」結果を得ることができた。しかし、少人数の被験者数のため、細部に渡っての十分な分析が行えなかったという課題が残った。
本WG活動はこの課題に対し、十分な被験者を確保しての授業実験を通じて、その授業の有効性の再確認や細部に渡る分析、受講者と教員の使い勝手の確認、ネットワーク負荷への確認を行った他、受講者の理解度促進策についての様々な視点からのデータ取得も行うことができた。また、本WG活動における授業実験を通じて、本システムに関する学生の関心度の高さと受講者へ学習意欲を高められることを確認することができた。逆に、実験を通じて得られた一番の課題は教材作成の負荷が高く、このままでは実用化はとても難しいであろうということである。以下に今後検討すべき課題を示し、後継WG*4のテーマにつなげていきたいと考える。