21世紀に生き残る計算機センターをめざして

理化学研究所 情報基盤センター 姫野 龍太郎

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■講演内容
  1. はじめに
  2. TOP500に見る日本の状況
  3. 計算機センターの役割の変化
  4. 以前のシステムの問題点
  5. 新システム
  6. クラスターの現状と問題
  7. 今後
理化学研究所
情報基盤センター
姫野 龍太郎

  1. はじめに

    まず、最初にTOP500スーパーコンピュータ・サイトのリストの過去10年の統計から、これまでのトレンドを調べることで、今後我々がハードウェアとしての計算機としてどんなものを考えればいいかを探る。次に、国立の研究機関と大学は独立法人化を行い、これまでと異なる制度のもとに置かれることになった。そのもとでは、計算機センターも従来と同じような方針と運営では立ちゆかないことが予想される。その状況の分析を行う。最後に、2004年始めに更新した理研のシステムの導入にあたって、独立法人化を強く意識したシステム設計や運用を採用したので、参考のために紹介する。

  2. TOP500に見る日本の状況

    過去10年、TOP500の中でアメリカはほぼ常に半分を占めていた。一方、日本は111から33と1/3以下に大きくシェアを落としている。この間、計算機はベクトルからスカラーへと主流が変化し、クラスターが登場に急激にシェアを伸ばしている。日本のシェア低下の原因はアーキテクチャが急速に変化しているのに、従来と同じ選択を繰り返し、結果的に価格性能比が悪いシステムを選んでいることにある。

  3. 計算機センターの役割の変化

    1) 代替手段の登場
    古くはワークステーションの登場で計算機センターを使わずにそれなりの計算ができるようになった。ここ10年を見ると、PCが高速化し、このワークステーションの役割を担い、更にクラスター化することでユーザーが必要とする性能を十分に担うことができるようになってきた。このため、計算機センターに頼らず、自前で計算ニーズを満たすという選択肢があり、計算機センターの必要性が下がってきている。

    2) 独立法人化の影響
    従来、国立機関の計算機センターの予算は予め決められ、他に転用されることはなかった。しかし、独立法人化されると理事長の裁量で他の用途に使うことができる。このため、計算機を利用する場合、計算にかかる費用を研究費として配分することと見なし、同様の選別をすることが望ましい。また、一部の研究者だけに利用が限られていることは問題であり、広く計算ニーズを探り、対応することが必要である。

  4. 以前のシステムの問題点

    3で示したことを考慮し、従来のシステムを見直した。問題点は

    1. ユーザー層が計算科学に限られ、しかも、外部の共同研究者が多い
    2. ベクトル化されていないプログラムではPCよりも遅い

  5. 新システム

    そこで今回は価格性能比が良いPCクラスターをシステムの中核にしたシステムとした。システムの利用に関しては競争的資金の募集手続きを参考に、同様の応募書類と選考委員会を設け、審査することとした。しかし、システム全体の1%以下の利用では利用を妨げないよう、簡易な手続きとした。さらに、バイオ系の研究者用に特化したシステムと、高エネルギー物理実験に特化したシステムを用意し、これらの分野の研究に配慮した。

  6. クラスターの現状と問題

    現状は予想よりも高い利用率と低い故障率で順調に推移している。しかし、予想外に非常にたくさんのシングルCPUのジョブがあり、クラスタ用のジョブ制御システムの限界が見えてきた。

  7. 今後

    現在、高速なネットワークによるグリッドコンピューティングが急速に進展している。今後、孤立した計算機センターでは多様化するユーザーのニーズに応えられなくなる。そこで、それぞれの計算機センターが連携し、グリッドコンピューティングによって互いに計算リソースを相互利用できるようにして行きたいと考えている。