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パネルディスカッション「e-Learningの運用と課題」


コーディネータ:高見澤秀幸(一橋大学大学院法学研究科)
パネリスト:三石 大(東北大学大学院教育情報学研究部)
不破 泰(信州大学大学院工学系研究科)
加藤 直樹(岐阜大学総合情報メディアセンター)
花川 典子(阪南大学情報処理研究センター)
喜多 敏博(熊本大学総合情報基盤センター)
安納 順一(富士通 文教ソリューション事業本部)


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[高見澤] それでは、パネルディスカッションのセションに入っていきたいと思います。私は、今回コーディネータをさせていただきます、一橋大学法学研究科の高見澤と申します。よろしくお願いいたします。
まず、簡単に私の自己紹介をさせていただきます。私は法学研究科に所属しておりますが、専門は法律ではありませんで、e-Learningシステムの研究や教育システムの開発等が専門です。実は、今回、事例紹介をしていただきました信州大学インターネット大学院にも2年前に入学いたしまして、この3月に卒業いたしました。学生の立場からのe-Learningを体験して今この場にいるというわけです。
そういった視点からもパネリストの方々のご意見を伺っていきたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。また、フロアの方々からもいろいろなご意見を伺い、議論を深めていきたいと思っておりますのでご協力のほどよろしくお願いいたします。
さて、パネルディスカッションの進め方ですが、先程、回収いたしました質問票より個別の大学の先生方に質問を承っておりますので、その質問に答えていただくことにしたいと思います。その後、共通のe-Learningに対する取り組みやLMSに対するご質問等を質問票よりピックアップさせていただき、先生方にお答えいただきながら、要所要所でフロアの方々からのご意見を伺おうかと思っております。
それでは、東北大学さんへの質問が幾つかきておりますので、お願いいたします。
[三石] では、順番にお答えさせていただきます。
1つ目ですが、「通常の授業との関係はどのようになっているのか?」というご質問をいただきました。
我々が配信している授業科目というのは、通常の授業を配信しております。実際に行っているものが中心です。現在、オンライン専用コースとして準備を進めているものもありますが、配信している授業はもともとあったものをオンライン化している形になっています。実際に対面授業でもオンラインでもやっているものがあるのですが、その関係は、社会人と学生向けの集中講義をオンラインで配信する形があります。また、対面授業で行っているものを並行してオンライン化しているものもあります。これに関しては、対面授業でも実際に行い、同じ内容のものもオンラインでも配信されているものもあります。社会人入学されている方にはオンラインで受講してもらい、一般学生には教室にきて受講してもらい、復習用に活用してもらう形になっています。こういった形式については決められた形があるわけではなく、各担当の先生方にお任せしている形になっています。
次の質問ですが、「現在、配信している授業コンテンツは実際に授業をしているものを収録したものなのか?それ用に作成したものなのか?」との質問をいただいております。
現在、配信している授業科目は全て、授業とは別にスタジオに来てもらい収録したものです。学校を揚げて広報してしまった手前もあり、ある程度格好のつく形でコンテンツを作成しなくてはならなかったり、他の先生に対してサンプルとしてお見せすることもあるため、まずは見栄えも良くしなければならないという意図もあります。また、実際行っている授業を収録するとなると、教室まで出向いて、専任のカメラマンが付いて収録し、更に内容を起こしていくという作業が発生しますし、黒板の字が見えない等、かえって手間が掛かるため、別撮りにしています。
ただ、授業の内容によって、解説が中心の授業などについては、その場で収録することを他の先生方と現在調整中です。
それから3番目は「一つのコンテンツに対してどれくらい作成する時間を要しているか?」という質問ですが、コンテンツはそれ専用に作成するわけですが、作成の手順として大きく3つのステップに分かれます。第1ステップはスライド資料を作成することになります。つまり、講義資料の作成です。作成時間については先生方によってまちまちです。既に授業でPowerPoint等を用意されている先生は時間が掛かりません。ところが、もともとオンライン化することを想定していないため、学生とのInteractionの中で授業の進め方、資料の提示方法をお決めになる授業の進め方をフレキシブルになさる先生では、資料の提示により学生の反応を考えながら資料を作成するため、非常に時間が掛かることになります。まちまちではあるのですが、先日開催されたe-Learningフォーラムで、実際の授業とコンテンツの作成では15倍程度の労力を要すると発言された先生もいらしたようです。少なくとも数時間以上は掛かるというのが現状です。第2ステップは、実際に収録する作業です。90分授業になりますから、90分の時間は掛かります。実際には学生に考えさせたり、手を動かしてもらう作業時間も考慮すると、コンテンツ自体は90分より短くなるとは思います。しかし、収録のカメラ設定や動作確認等があるため、90分強は掛かります。その後 第3ステップとして収録されたデータをLMSシステムへ登録する作業になります。登録についてはそれほど時間を要しません。手引きに従って作業をすれば時間は掛かりません。
4番目にご質問いただいた「サポート体制はどのようになっているのか?」にお答えします。先ほどの事例紹介の中でもお話しさせていただきましたが、私が所属する教育情報学研究部がISTUの支援組織になります。しかし、一つの独立の大学院になっており、所属するのは教員のみとなっております。出来たばかりの組織なので技官等もおりません。そこで時間等も足りませんので、派遣で3名の職員の方に来ていただいております。派遣(支援員)の方にどんな仕事をしていただいているかというと、どういう形で収録を行ったらいいのかという説明を各先生にしていただいております。しかしながら、新しいコンピュータシステム(LMSシステムやオーサリングツール)に抵抗のある先生方が多いので、PowerPointの資料をお持ちいただいたところで、実際の収録に対しては始めから終わりまで、補助作業を行っていただいております。更に、大学向けにカスタマイズしていただいているのですがシステムが使いづらい部分等が多少ありますので、授業の登録作業も現在は支援員にお願いしている状況です。
ユーザサポートについては、教員・学生の両方から質問が多数メールで届いております。定型的な質問については支援員に回答をしてもらっています。技術的な部分等については、教員が一件ずつ回答している具合です。FAQを作りつつという状態です。


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