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開催趣旨

企画委員 : 松澤 照男(北陸先端科学技術大学院大学情報科学センター)

     ただいまご紹介いただきました北陸先端科学技術大学院大学の松澤でございます。

     皆様、ご多忙中、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。これまで準備を進めてきました合同分科会の企画委員の皆様、三つの分科会の企画委員の皆様、そして合同分科会開催に重要な役割を果たしておられるSS研事務局の皆様を代表して、今年度の合同分科会の開催趣旨を説明させていただきます。

     今年度は先ほど永安会長が申し上げましたように「グリッドコンピューティングを考える」をテーマにしております。ご存知のように文部科学省のNAREGIプロジェクトやスーパーSINET、あるいは経済産業省のビジネスグリッドなどグリッド関連の国家プロジェクトが強力に進められております。SS研でも、例えば昨年度の合 同分科会の討論会での「組織を超えたグローバルサービスの実現」もある種のグリッド関連のテーマでした。そして科学技術計算分科会や昨年度から立 ち上がりましたGrid Computing WGの会合にはいずれも多くの皆様が参加され、活発な 討論が行われたと聞いております。これはSS研におけるグリッド、あるいはグリッド技術への関心の高さを示しているものだと思います。これらのグリッドやグリッドプロジェクトが騒がれて始めてから数年が経過しております。現在は「グリットとは何か」という素朴な疑問の段階からいよいよ姿が見えてきた、夢物語から具体的な将来像が見えてきたのではないかと思います。そのような背景もあり、今回は「グリッドコンピューティングを考える」をテーマにさせていただきました。この数年、これまでのグリッド技術の蓄積を踏まえて、将来どのようなグリッドになるの だろうか、あるいは将来の具体的なグリットのイメージができればと期待しております。

     さて今日は、早稲田大学の副総長の村岡先生に「What is GRID?」で特 別講演をお願いしております。村岡先生はご存知のようにグローバルグリッドフォーラムで重要な役割を果たしておられ、かつ日本のグリッドの指導的な役割を果たして おられます。今日のご講演で、これからのグリッドの姿を追ってみたいとお聞きしております。大変有意義なお話がお聞きできるのではないかと思っております。

     グリッド関連でいいますと、合同分科会のメインイベントのひとつでもありますパネル討論会は明日の午前中、「グリッドへの期待」をテーマとして開催されます。討論会に先立って、富士通の棚倉執行役から「富士通のGridへの取り組み」を ご報告いただきます。討論会の話題提供では大規模ハイブリッド計算利用者の立場から筑波大学の朴先生に、大規模データ利用者から高エネルギー加速器研究機構の片 山先生に、ゲノム利用者からは遺伝研の宮崎先生に、そしてCAD Gridの開発で重要な役割を果たされた富士通研の門岡様からはソリューション提供者の立場からご報告を いただくことになっております。今回の討論会は、ご案内しましたように利用者の立場からの切り口でグリッドを考えてみたいと思います。棚倉執行役も討論会に参加さ れるとお聞きしておりますので、非常に興味深い討論会になるのではないかと思って おります。特にコーディネータは日本原子力研究所関西研究所の上島先生にお願いしました。上島先生は大規模ストレージ、バイオグリッド、そして医療関係と大変幅広くご活躍されており、非常にバックグラウンドの広い方でございます。また、パネリストの先生方は現場で精力的にグリッドに取り組んでおられる若手の方でございます。そういう意味で大変興味深い討論会になると思います。

     また明日の夜、科学技術計算分科会とシステム技術分科会が合同で分科会懇談会を開催いたします。テーマは「ここが聞きたいグリッド」で、司会者は理化学研究所の姫野先生とお聞きしております。アルコールを飲みながらの懇談会ですので、参加者の皆様の本音が聞けるのではないかと思います。これもまた非常に興味深い懇談会になるのではないかと期待しております。

     今年度は一般報告を二人の先生にお願いしました。最初は、大阪大学の菅井先生に「e-Learningにおける学習環境のデザイン論に向けて」でご講演をいただくことになっております。このe-Learningについては、これまで研究教育環境分科会が中心になって様々な活動を続けてきております。菅井先生にはe-Learningの可能性、教育学における位置付け、今日の教育課題と関連して学習発達の理論、学習環境のデザインなどについてご講演いただくことになっております。

     e-Learninigに関連して申し上げますと明日の夜、研究教育環境分科会の分科会懇談会が「次世代のe-Learningを考える」で開催されます。そして最終日の 午前中に「e-Learningは教育を変えるか?〜e-LearningからLearningへ〜」をテーマとして研究教育環境分科会第2回会合を開催いたします。このように「e-Learning」も 合同分科会のひとつの柱ではないかと思っております。

     次の般報告は東京大学の平木先生に「データレゼボワールにおけるLFNの 高度利用」でご講演をお願いしております。ご存知のように昨年のSC2002でデータレゼボワールシステムがMost Efficient Use of Available Bandwidth Awardを受賞しました。この開発には富士通さんが関わっているとお聞きしております。先端的な分野の研究・技術についてのお話が聞けるのではないかと思います。

     先ほど会長が申し上げましたように、今回の合同分科会はHPCミーティングと切り離して合同分科会だけで二泊三日にしました。これはSS研のオープン化という課題からHPC Meetingが単独でHPCフォーラムとして開催されました。他方、分科会セッションがパラレルで開催されると参加したい報告のある分科会に参加できないので、参加できるようにして欲しいというご要望にお応えしたものです。しかし二泊三日にしても三つの分科会をシリアルに開催するのはスケジュール上、分科会の時間が十分確保できないことから、一つはシリアルで、二つの分科会はパラレルで開催されます。明日の午後はシステム技術分科会第2回会合を開催し、最終日の午前に研究教育環境分科会と 科学技術計算分科会の第2回会合をパラレルで開催いたします。見かけ上、明日の午後はシステム技術分科会と科学技術分科会がパラレルで行われるようになっておりますが、明日の科学技術計算分科会は基本的にPRIMEPOWER HPC2500のユーザを対象に行われると聞いておりますので、明日の午後はシステム技術分科会の会合が中心です。3日目の午前中は二つの分科会がパラレルに行われると考えていただきたいと思います。システム技術分科会は「大容量データのマネジメント(ストレージの運用管理)」のテーマで、研究教育環 境分科会は「e-Learningは教育を変えるか?〜e-LearningからLearningへ〜」のテーマで、そして科学技術計算分科会は「HPC2500とマイクロプロセッサ」のテーマで それぞれ行われます。それぞれ活発な討論が行われるものと期待しております。

     今日の特別講演の後に今年度新設されたWGとして、e-Learningコンテンツ生成WGとLinux版運用支援システムWGの二つのWGからご報告がございます。これはチュートリアル的な内容と今後の活動をご発表されるとお聞きしており、大変興味深い話がお聞きできるのではないかと思います。またSS研ユーティ推進委員会からもご報告がございます。

     そして明日の午後に恒例の文化講演がございます。今回は関西大学の三上先生にご尽力いただいて、関西大学名誉教授の井上先生から「笑いの力 〜笑いの不思議」というテーマでご講演いただくことになっております。笑いをどのように考えるのかなど楽しい話がお聞きすることができ、リラックスした文化講演になるのではないかと期待しております。

     最後に、最終日の午後、研究所報告を行います。これは今回初めて企画したものです。富士通研究所の篠田フェローさんから「プラズマテレビにかけた夢」をテーマにご講演いただけることになっています。ご存知の方も多いと思いますが、これはNHKのプロ ジェクトXで放映され、ご覧になった方も多いかと思います。テレビではテレビ用に編集されておりましたが、今回は篠田フェローさん自らの体験談や新しいシステム技術開発の苦労話などの裏話も含めてお聞きできると思います。ご講演から篠田フェローさんから技術者像について大いに勉強させて頂きたいと思います。非常に楽しみな講演です。

     以上、非常に盛り沢山の内容であります。先ほど申し上げましたように二泊三日の 比較的ゆったりしたスケジュールでの会合ですので、是非ともリラックスして、会員の皆様と富士通さんの相互の交流や親睦を深めることも合同分科会の目的のひとつではないかと思います。分科会や討論会に積極的に参加されますと同時に皆さん相互の親睦が深まる ようアクティブな活動をお願いしたいと思います。  そして皆様のご協力、ご支援によってこの合同分科会が有意義なものになるようにお願いしまして、私の趣旨説明とさせていただきたいと思います。(拍手)


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