司会:関西大学工学部 三上市藏
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【司会】 文化講演は合同分科会の恒例のセッションであります。
今回は関西大学名誉教授の井上先生にお越しいただいて90分間、「笑いの力〜笑いの不思議」というタイトルでお話いただきます。
その前にちょっと簡単に井上先生のプロフィールをご紹介させていただきます。 先生は1960年に京都大学文学部哲学科社会学 専攻を卒業され、それから読売テレビ放送で13年間お勤めの後に関西大学の社会学部に移られました。
1981年に教授になられまして、関西大学が1994年に総合情報学部を新設しました時にそのリーダーとしてお移りになられま
した。そして、この3月でお辞めになられまして、4月から関西大学名誉教授ということで、現在に至っておられます。
専攻は社会学、情報メディア論、笑い学研究などです。 特に1994年に日本笑い学会を設立されまして、現在も会長を務め
ておられます。
また国際ユーモア学会理事もされていますし、1999年から3年間、ご存知の方も何人かおられるかと思いますが、大阪府立上
方演芸資料館の館長を務めておられました。
そして、笑いに関する本を沢山書いておられます。「大阪の笑い」とか「大阪の文化と笑い」とかです。 それでは井上先生 よろしくお願いいたします。(拍手) |
1.はじめに
ご紹介いただきました関西大学の井上でございます。 本日のSS研にご招待いただきましてありがとうございます。私は総合
情報学部というところにおりまして、情報メディア論という科目を担当していました。今も大学院の非常勤でその科目だけを担
当しております。大学に「笑い学」という講座が出来れば楽しいのですが、まだそこまでは至っておりません。本日は私が従来
から関心を持ち続けて参りました「笑い」についてお話をさせていただこうと思います。
本日の発表論文を見させていただくと、大変肩の凝るようなテーマが一杯並んでおりました。さぞかし皆さんお疲れではない
でしょうか。本日の私の話が皆さんの肩を相当揉みほぐすようなことになれば良いと思います。笑いのない笑いの話というのは、
これはまた面白くないですから、笑えるところがあったら、大いに遠慮なくワハハと笑って頂けたら結構です。 私はここで笑い
が取れたかな、なんて思うことで嬉しく思いますが、なかなかそう上手くはいかないかと思います。
これから90分お話をさせて頂きます。ご紹介の中では「日本笑い学会」を創ったと正確に紹介していただきましたが、「日本 お笑い学会」と言われることが再々あります。実は「お笑い」も研究対象の一つなのですが、「お笑い」と「笑い」というのは、ちょっと違います。通常「お笑い」という言い方で括ります時は「演芸」、つまり落語とか漫才とか喜劇とか、舞台の上のいわゆる
笑いの芸能の世界、あるいはテレビのいわゆるお笑い番組等を指します。従ってお笑いタレント、お笑い番組、お笑いバラエテ ィ等の形で「お笑い」という言葉は定着しているわけですけれども、私たちが目指すのは、そういうお笑いの研究も含めて「笑
い」全般を研究対象としています。人間はなぜ笑うのか、どうして人間は笑う存在になったのか、他の動物と違ってどうして笑 うのか、そういうことを含めて研究して行こうと思っております。まだまだ分からないことが一杯あります。ということは、今
日まで笑いを対象にして真面目に研究しようという人があまり居なかったということです。文科系の方では、古くはギリシャの プラトンから始まって笑いについての考察は色々成されて来ているということはあるのですが、しかし、笑ったら人間の体内で
何が起こるのかという医学的な研究は殆どなされてきませんでした。