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5.現在の争点−教育−

5.1 教育の質

5.2 教育の効果

     それとともに、e-Learningが教育上の効果をあげるのか否かに関しても、研究上の議論が始まっている。もっとも広く行われているのが、遠隔教育における学生の達成度を対面教育のそれと比較する方法であり、e-Learningに限らず、郵便や放送を利用した遠隔教育を含めて広く過去の研究を整理したウェッブ・サイトが有名である15。No Significant Difference Phenomenonというそのサイトからは、遠隔教育は対面教育に対して有意に劣るものではないという1920年代からの約350の研究結果が蓄積されており、e-Learningの有効性が示されているが、他方で、これまでの遠隔教育の効果に関する研究が、個々のコースを個別に検討するものであって、教育プログラムを総体としてみていなこと、遠隔教育は中退率が高いにも関わらず、最終的に到達したものの到達度を測定していること、学生の属性による差異の検討がなされていないことなどを問題として指摘する報告書もあり16、教育効果を測定することが容易ではないことを教えてくれる。
     また、教育効果を達成度に特化して追求していくと、学習のプロセスはどのようなものであっても、最終的にある段階に達成すればよしとすることにもなりかねない。従来から、有職成人が多い遠隔教育においては、職業経験を単位に換算したり、試験に合格することで単位が発行されたりという仕組みが取り入れられてきたが、e-Learningにおいてもそれは同様である。Competency-based assessmentといわれるこうした評価方式は、学生が示した能力を教育機関が評価するというものであり、その能力がどこで獲得されたかは問わない。これを突き詰めていけば、教育が不在であっても高等教育機関は成り立つわけである17
     教育効果をどのようなものと定義するのか、学習のどの段階を評価するのか、さらなる研究が必要とされている。


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