News Letter「ドメイン名と紛争処理の現状」(5/17)

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既存の紛争処理に代わる方法ということで、ICANN uDRPというものが作られた。 既存の紛争処理の方法というのは、一般的なのは裁判のことである。 あと可能性としては仲裁という方法もあるが、これら裁判や仲裁に代わる方法ということでICANN uDRPというものが作られた経緯がある。

既存の裁判や仲裁と比較して何が違うのかというと、まず「低費用」。 4つの紛争処理機関のうち一番多く扱っているのはWIPO(World Intellectual Property Organization)という国連機関の1機関。 世界知的所有権機関というところが4つのうちの1つだが、WIPOの例では、1件の申し立てに付き1500ドル(16〜17万円)の料金で紛争処理が行われるということになっている。 ただ例えば、企業の場合には弁護士を雇うことになるので、弁護士費用を考えるとまた少し上乗せになるだろうと思われるが、裁判に訴えて出る費用に比べると格段に低費用ではないかと思われる。 次に、「短期間」ということで最高でも55日で裁定が出される。 それから3つ目の特徴は「簡易」。 人の移動は全く無く全て書類ベ−スで処理されて裁定が出される。 それから4つ目、「不服の場合は裁判へ」ということで、結局裁判に行くのか、と思われるかもしれないが、大抵は紛争処理機関ICANN uDRPに出されたものは裁判に行くことなく、紛争処理機関の裁定で落ち着いている(統計は後述)。 法的な観点からいうと、あくまでも自主ルールという位置付けで、お互いに契約した内容を前提に紛争処理していく。 不服の場合には裁判所に行くことになり、仲裁の場合とこの点で異なる。 仲裁の場合には「仲裁は拘束力があり、バインディングする」つまり、仲裁決定したら裁判所へは持っていけない。 従って、仲裁を始める前に両当事者が仲裁に関して合意(仲裁の決定は最終決定である)したうえで、仲裁というプロセスが始まる。 そういう意味で仲裁そのものがなかなか始まりにくいという性格がある。 uDRPの場合には、裁判へも行けるので、仲裁とは異なる方法ということである。

裁定の実施ということで、3つの具体的な裁定がある。 1つは移転あるいは取消ということでドメイン名を持っている側が負ける(申立人が勝つ)パタ−ン。 ここでは移転・取消の2つしか書いてないが、もう1つの裁定の結果として、ドメイン名登録者側の勝訴(ドメイン名はそのままドメイン名登録者が使う権利があるという結論)があるが、ここでは移転・取消ということでドメイン名登録者側が負けた場合のことを書いてある。 ドメイン名登録者が敗訴し、移転または取消ということで裁定が下され、10日以内にドメイン名登録者側から裁判所へ提訴したという知らせが無い限りその裁定結果が適用される。 10日以内に裁判所に訴えたという知らせがあれば裁定は凍結という形になる。 裁判所の結論が出るまで、何らアクションを起こさないというのがICANN uDRPの特徴である。
 

©Copyright 2001 by Toshihiro Tsubo

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