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開催趣旨企画委員 : 土田 昭司(関西大学情報処理センター)
今回の合同分科会、大きなテーマは「高速ネットワーク」です。われわれの研究教育環境分科会では、教育環境における「高速ネットワーク」の活用を考えることがテーマです。さて、少なくとも教育に関して言えば、いわゆる遠隔地を結んだ教育は、「高速ネットワーク」が出現する前にもありました。例えば、5・6年前から通信衛星を使った教育ネットワーク(いわゆるSCS)の構築が文部省を中心として推進されてきております。主要な大学には大きなパラボラアンテナが設置され、それを使用して遠隔地を結んだ授業を行う、あるいは、優れた授業や講演を遠隔地の他大学で聴講できるようにしようとする試みがなされてきています。これは現在でも継続中の事業でありますが、これについてよくご存知の先生方は実はお判りかと思いますけれども、このシステムを活用して教育を行おうとしている大学教員は殆どいないと言っていいほど少数であるのが現状です。大学としても文部科学省の手前脱退はしませんが、実際の教育現場において積極的に活用されて教育に役立っているという成果が現れているようには思えません。それは、技術だけが進行して、それが利用に結びついていかない例の一つであるように思われます。すなわち例えば、東京でアクアライン(道路)が開通しましたが、交通量が少ないことに関して、運輸大臣がいみじくも「行く必要のない道路を通る車はない」と発言されたと聞いております。つまり、アクアラインの向こう側に行かなければならない用事を積極的に作らない限りは、いくら道路を作ったからといっても、使う人間はいないということです。これからの大容量の高速ネットワークに関してもこれと同じことが言えると思います。使わなければならない仕事がなければ、いくら技術が進行したところで使われることはないだろうということです。 家庭用では、ブロードバンドの目覚しい普及から見られるように、大容量の高速ネットワークは確実に進んでいます。しかし、それは家庭には家庭の需要があるということでしょう。家庭では進んでいるからといって、大学の研究教育の場で同様に進むかは、一歩立ち止まって、本当に家庭と同じような需要が大学の研究や教育においても見込めるのかを見極めなくてはいけません。そしてその上で、「高速ネットワーク」の大学教育・研究にもたらすであろう潜在的な効能を深く考察することによって、積極的にその需要を創り出すことを目指さなくてはならないと考えます。積極的に仕事(需要)を創る努力をしないで、ただ高速ネットワークを張ればよいという態度は、責任のある者のとるべきものではないと考えます。
今回の合同分科会の分科会セッション「研究教育環境分科会」は、このようなことを考える糧になればと思っております。
最初の発表として、「高速ネットワーク」を用いたキャンパス設計としてどのようなシステムが考えられるのかを富士通からご提案をいただきます。次に名古屋大学情報メディア教育センターの梶田先生より「WebCTの現状と高等教育用情報基盤の今後」という題目で、「高速ネットワーク」を活用した教育方法についての貴重なお話がうかがえると思っております。その後、休憩をはさみまして、北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究センターの國藤先生、山下先生から「知識創造キャンパスの実現」という題目で、先端的な「高速ネットワーク」を活用したシステム構築についての実践にもとづいたお話をうかがえることになっており、非常に期待しております。
ということで、期待を込めて、3つの講演をお聞きしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
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