東北大学 附属図書館 事務部長 済賀 宣昭
抄録 大学は教育研究の場であり、知の創造と発信を社会的使命とする。その使命遂行には、知識創造のベースとなる情報基盤を整備することが不可欠である。情報基盤とは情報の蓄積、編集、流通に加えて情報の統治を行うことにより、教育研究環境にあってライフラインとも言うべき組織的基盤となるものである。情報基盤の整備には既存の情報関連組織を機能統合する方法と組織統合する方法の2つの方式が考えられる。東北大学では平成13年4月に情報基盤の運用組織として、情報シナジー機構とその中核となる情報シナジーセンター発足させたが、前者が機能統合、後者が組織統合というハイブリッド型のアプローチをとった。教育研究環境における情報基盤の形成にあたっては、その機能および在り方についての綿密な検討が必要であり、今後情報基盤の有無が大学にとって重要な要素となる。 1.はじめに 情報技術の進展に伴い、知の創造と発信を社会的使命とする大学には、知識創造循環の基盤となる情報基盤を整備し、より強力な知の探求(quest for knowledge)の場を形成することが不可欠となっている。情報基盤の整備は既に政策課題ともなっており、1999年6月の文部省・学術審議会の答申「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」では、初めて大学における情報関連機関の再編成・一体化による学術情報基盤の整備が提言され、2001年3月に閣議決定された第二期の科学技術基本計画においても、「科学技術振興のための研究情報基盤の整備」がうたわれ、2010年を目途に世界最高水準の知的基盤を目指すとしている。また、2001年1月にIT戦略本部が決定したe-Japan戦略に基くe-Japan重点計画では5つの政策課題が掲げられ、そのうち世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成、教育・学習の振興と人材育成、高度情報通信ネットワークの安全性と信頼性の確保が挙げられている。さらにその平成14年度のIT重点施策であるe-Japan2002プログラムでは、5つのアクション・プログラムのうち、高速・超高速インターネットの普及の推進、教育の情報化・人材育成の強化、ネットワーク・コンテンツの充実が重点施策となっている。また2001年8月30日には、文部科学省の科学技術・学術審議会が、我が国における2010年での知的基盤整備の具体的方策を定めた初の「知的基盤整備計画」1)を答申している。こうしたことは、我が国における教育研究環境における情報基盤の形成が喫緊の課題であることを物語るものである。情報基盤とは、図-1に示すように、情報の蓄積(stock)と流通(flow)に加えて、情報の編集(editing)と統治(information governance2) )を組織的に行うベースとなるものであり、大学にとって教育・研究を支えるライフラインとも言うべき基盤となる。ここで、情報の統治とは、規制的標準(regulatory standard)をもって、情報を収集、編集・処理・組織化し、新たな付加価値を持った知見を組織的に創生して、統合的に共有・活用するための統治、支配を意味する。本稿では大学という教育研究環境において情報基盤をどう整備して行くべきかを、主として東北大学情報シナジー機構並びに同センターを事例に考察したい。 図-1:情報基盤とは?