大学の在り方、特に大学における教育の質についての議論が、新聞をはじめとするマスコミなどでも頻繁に議論されている。特に、大学が社会に対して十分に機能しているのか、本当に高等教育機関として人材の養成機能を果たしているのか、疑いを呈する論調も少なくない。その一方で、大学全入学時代を迎えつつある昨今、キャンパス内における授業や課外活動のみならず、就職や生活といったキャンパス外での活動に対する学生支援の在り方が議論されている。このような議論は必然的に教職員の多忙化をなお一層進めることとなる。このような状況のなか、ICTの利活用なくしては、教育の質保証、学習面以外を含めた学生支援などの実現は望むべくもない。
このような背景から、今年度の教育環境分科会は、「学生をICTでどう支援していくか?」をテーマとして、2回の会合を開催する。第1回会合では、“日常的な学生支援”という視点から、講義室内を含むキャンパス内での学生の活動を支援するための事例を紹介する。具体的には、学修による成果という視点から“知的能力の可視化WG”の成果発表、ICカード学生証による講義への出欠データなどを利用した学生支援に関する講演を計画している。また、“ワールドカフェ”と称した参加者中心型の議論で、参加者・講演者で、ライフログの活用等について新しいアイデアの創出も含めた意見交換・討議を計画している。
一方、第2回会合では、“非常時”を含めたキャンパス外での学生支援をテーマに議論する。非常時に不可欠な安否確認の在り方やシステムの開発動向、さらに地方大学での就職活動時の授業支援、さらにメンタル面での支援などキャンパス外を含めた学生支援へのICT活用を交えた事例発表を企画する。会合後の懇談会では、学生支援のための情報の活用と管理という二つの立場から議論を深める予定である。
なお本分科会の名称には、明示的には研究環境が含まれてはいないが、大学における教育、特に大学院教育においては研究活動は不可欠であることは言を待たず、分科会としても教育と研究を俯瞰した形での魅力的な話題を提供し、より多くの皆様にご参加いただけるように検討を進めていく。