大学教育の国際化と言われて久しいところですが、国際的に活躍できる人材の養成は我が国にとって重要なテーマであることに変わりはありません。文部科学省の国際化拠点整備事業をはじめとして、各大学では様々な国際化施策を講じておられ、教育環境を整備されています。
教育環境分科会では、第1回目会合のテーマを「国際化に向けた教育環境」に設定して、企画を進めて参りました。本日は、大学に留学生を受け入れて支援していくための方策とITとの関わり、受け入れた留学生を含む学生全体に対する情報倫理教育の工夫、さらには不正行為をさせないためのシステム管理側について、各大学の現状を紹介していただくことにいたしました。パネルディスカッションも含めて、参加者の皆様と議論を深めて参りたいと思います。
12:45- | 受付 |
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[司会] 爲川雄二(東北大学) | |
13:15-13:20 |
[開会あいさつ] 中西 通雄 (大阪工業大学) |
13:20-14:20 講演 50分 Q&A 10分 |
[講演1]
「大阪大学における留学生支援の現状 −留学生に魅力的な大学とは?−」 大阪大学 国際教育交流センター 近藤 佐知彦 [プロフィール]
Global Campus Net, Osaka(以下GCN)とは2003年度から大阪大学で運用されている「留学生のための情報ポータルサイト」です。留学生や外国人研究者を対象としてネット上のワンストップサービスを目指したものです。ユニコード利用の多言語BBSを一つの核として、日本語教育、奨学金情報、ビザ情報、リサイクル情報、保健医療情報、子育て情報などに加え、外国人可の住宅情報まで、大学関係者だけでなく自治体やNPO、企業の協力も得て外国人フレンドリーなキャンパス環境を創造してきました。もともとは工学研究科で始められたプロジェクトですが、様々な変遷を経て2010年度からは国際教育交流センター内に開設された「サポートオフィス」でマネジメントすることになりました。対面ワンストップサービスであるサポートオフィス業務を補完するものとして位置づけられています。大学国際化拠点整備事業(いわゆるGlobal 30)採択に伴って、2010年4月には全面的なサイトリニューアルを行いました。そしてID取得者を対象に希望条件を不動産業者と「交渉」することが可能になる「住宅リクエスト」、タクシーによる関西空港からの「送迎サービス予約」システム、そして日本人学生を対象とした「チューター希望者登録」システム等の新機能・サービスを付け加えています。本学の正規ホームページは日英両語に完全対応となり国際化が進んでいます。しかし外国人にとって重要な生活情報やサービスが「.ac.jp」のサイトだけで提供できるわけでもありません。NPOや企業の支援も受けた垂直的な情報やサービス提供に加え、外国人同士の水平的な情報流通環境(BBS)もGCNで整備をしつつ、大阪大学ではキャンパスの国際化を推進しようとしています。
[Keyword]留学生支援、多文化共生、情報ポータル、オンラインコミュニティ、大学国際
化、地域国際化 |
14:20-15:20 講演 50分 Q&A 10分 |
[講演2]
「倫倫姫プロジェクト: 多言語情報倫理eラーニングコンテンツの開発と運用」 群馬大学 総合情報メディアセンター 上田 浩 [プロフィール]
群馬大学における、多言語情報倫理eラーニングコンテンツの開発と運用について報告する。本コンテンツによる情報倫理教育は学生教職員問わず全学的に実施されており、教育内容の標準化、質の保証ならびに自学自習の環境を実現した。加えて、英語,中国語に対応することにより、増加を続ける留学生に対応することができた。
[Keyword]e ラーニング、情報倫理、SCORM、Moodle、Global English、留学生教育
本講演では本プロジェクト開始のきっかけから多言語化に至るまでの経緯、運用を通じて得た留学生を含めた受講生の声を紹介し、留学生への情報倫理教育にeラーニングが有用であることを示す。 |
15:20-15:40 | 休憩(20分) |
[司会] 岩田則和(広島大学) | |
15:40-16:40 講演 50分 Q&A 10分 |
[講演3]
「インシデント発生を抑えるための取り組み」 熊本大学 総合情報基盤センター 杉谷 賢一 [プロフィール]
インターネットの脅威から組織内のネットワークを守るために、ファイアウォール(FW)や侵入防止システム(IPS)などの導入が多くなっているが、色々なインシデントの発生は無くなることは無い。それは、攻撃者の手口が巧妙になってきていることに拠るものもあるが、組織内のユーザの情報リテラシーの低さに拠るものの方が圧倒的に多いと考えられる。
[Keyword]インシデント、情報リテラシー教育、情報セキュリティ、個人情報保護、ウィルス対策本講演では、インシデント発生の低減を目指して熊本大学で行っている情報リテラシー教育やインシデント検知システム等について報告する。 |
16:40-16:45 | 休憩(討論準備)(5分) |
16:45-17:45 討論 60分 |
[討論]
「国際化・多様化の進む大学における コンプライアンスの現状とその課題」 コーディネータ:熊本大学 宇佐川 毅 パネリスト:大阪大学 近藤 佐知彦 群馬大学 上田 浩 熊本大学 杉谷 賢一
※ 討論は、フロアを交えた活発な討論の場とするため、事前資料なし・無記録で実施いたします。
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17:45-17:50 |
[閉会あいさつ] 中西 通雄 (大阪工業大学) |
18:00-19:30 |
懇親会(会費 \500)
お飲み物と乾き物のみご用意した、簡易的な情報交換会です。
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※デモ展示:未定
日本政府が発表(2008年)した「留学生30万人計画」は、2020年までに、現在の12万人から30万人に増やそうとする計画ですが、これは大学にとっても、国際的な人材を育成する重要なテーマであり、多くの大学で国際化に向けた教育環境の整備が進んでいます。さらに他の教育機関からの進学者も増加しており、対象とすべき学生の多様化が進んでいます。しかしながら、学生への情報倫理教育の徹底や学生による著作権違反への対応については、必ずしも盤石な状態ではなく、大学が警告を受けている例も少なくありません。法的措置の対応策以外の(大学教育の観点からの)明確な対応策がまだ見えていない現在、この問題に担当者が奔走しているのが現状ではないかと思います。
本会合では、これら大学教育環境の課題について、技術の側面(ICT)、および教育の側面の双方から、同じ問題に取り組んでいる方とともに、その対策を検討・研究していきたいと考えております。また、討論では、記録をしない、他言無用セッションとし、ここだけの話として、本音ベースでの問題解決のための検討を行いたいと思います。
さらに懇親会では、他言無用セッションの続きとして、会合では公にできないような諸問題(「光と影」の「影」の部分)についても、じっくり意見交換したいと思います。