情報通信技術(ICT)は大学などの高等教育機関に導入され、教育研究活動の効率化に大きく貢献してきました。すなわちこれまで「紙」中心で構築された教育研究環境が電子化されてきたわけです。これに対して、10年ほど前からは、ICTを活用することで、どのようにして教育の効果や質を高められるか、また、高等教育機関が社会に対してどのような貢献をして責任を果たすかという視点からも展開が進んできています。そこで今年度の教育環境分科会では、まず、現状での課題を整理してその解決法を探ることにしました。さらに、次代を担う世代を我が国の高等教育機関で育てるための理想的な教育研究環境について、ICTを中軸に据えた形で「夢」を語る場を提供することを活動方針としています。
第1回分科会では、「今の大学に何が欠けているか −大学センターのなすべき課題−」と題し、セキュリティと著作権およびソフトウェアライセンス管理に関して先駆的な事例および現状の問題をご紹介し、特に情報系センターの立場でなすべきことを会員の皆さまと議論を深めたいと考えております。
セキュリティについては、まずウィルスによる脅威の現状を確認し、管理者にとって何が問題かをプロの視点からアドバイスを頂きます。次に、オープンコースウェアに代表されるような大学の教育用コンテンツを発信する場合の著作権処理について、特にCC (Creative Commons)ライセンスを活用した事例を中心に最新動向を紹介して頂きます。最後に、ソフトウェアの使用ライセンスの管理の現状と包括ライセンス契約の動きについて、皆様との意見交換を予定しています。
なお、分科会に引き続き懇親会を企画させていただいております。気楽な形で交流できる場ですから、ぜひこちらにも奮ってご参加ください。
12:45- | 受付 |
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13:15-13:20 |
[開会あいさつ] 中西 通雄 (大阪工業大学) |
【13:20-15:20】 | 【セキュリティセッション】 司会:及川 義道(東海大学) |
13:20-14:20 講演 50分 Q&A 10分 |
[講演1] 高等教育機関におけるセキュリティ脅威の最新動向とその対策 -ウィルス感染から見えてくるアンチウィルスの限界と今後- 名古屋大学情報基盤センター 教授 高倉 弘喜 [プロフィール]
OSの頑強性の向上、firewallやIDSなどの普及により、インターネットから直接攻撃を受けてウィルスに感染する事象は激減している。一方で、USBディバイスのPCへの接続、いつものWebサイトにウィルスが埋め込まれるなどにより、PC利用者が意図せずウィルスを持ち込んでしまう事例が急増している。最近のウィルスは、感染後に様子見のため潜伏期間を設ける、活動開始後も他PCへの感染拡大を試みないなど、用心深く活動する。また、ウィルスの更新、あるいは、盗聴情報の送信のために、外部に設置されたWebサーバを利用する。アクセス制限を設けたネットワークでも、proxy等を介したWebアクセスを許可することは多く、この活動を検知するのは難しい。このため、一度感染を許すと、感染の確認や完全な駆除は難しくなる。
[Keyword]コンピュータウィルス、ゼロデイ攻撃、ネットワークセキュリティ、感染防止策本講演では、このような現状を実際の観測事例を元に説明し、新たな脅威に対する対策手法について述べる。 [講演資料] プレゼン資料(最終版) |
14:20-15:20 講演 50分 Q&A 10分 |
[講演2] セキュリティ監視と救急対応から見える教育現場のセキュリティ -大学教育現場におけるセキュリティ対策の考え方- (株)ラック 取締役 西本 逸郎 [プロフィール]
教育機関のネットワークやシステムが持つべき役割としては、研究基盤、研究対象、学校運営基盤、学内社会基盤、さらにIT活用とセキュリティの教育的意義などがあると考えられます。しかし、現状ではセキュリティ上の課題や費用の観点などから適切に活用できていないところも多いのではないかと思います。
[Keyword]情報セキュリティ, セキュリティ監視, セキュリティ事件, ITの利活用, クラウド活用, スマートフォンこのような課題を克服し、魅力ある学校を維持していく上で、教育機関にて発生したセキュリティ事件やITを取り巻く時代の変化、さらにコストパフォーマンスの観点で、課題を整理し、今後の成すべき対策の指針に関してセキュリティ屋としての目線で、お話をさせて頂きます。 [講演資料] プレゼン資料(最終版) |
15:20-15:40 | 休憩(20分) |
【15:40-16:40】 | 【著作権セッション】 司会:岩田 則和(広島大学) |
15:40-16:30 講演 50分 Q&A 10分 |
[講演3] 高等教育機関におけるオープンエデュケーションの最新動向 -Creative Commons LicenseによるOPENCOURSEWAREの展開- 日本オープンコースウェア・コンソーシアム 代表幹事 OPENCOURSEWARE Board Member 慶應義塾大学 DMC機構 教授 福原 美三 [プロフィール]
2001年にMITがオープンコーウウェア(OCW)のコンセプトを発表してから10年となる。MITはOCWを世界に広める活動を同時に推進し、次第に賛同、参加する大学が拡大した。世界的には2008年に国際コンソーシアムが正式に発足し、200以上の機関が参加し、15000以上のコースが公開されている。日本でも国内コンソーシアムを組織し、23大学が参加、1500以上のコースが公開されている。
[Keyword]オープンコンテンツ、高等教育、OCWこの活動を実現している基本スキームの一つがクリエイティブコモンズライセンスである。 [講演資料] プレゼン資料(最終版) |
【16:40-19:00】 | 【ライセンス管理セッション】 [※記録をしない、他言無用セッション] |
16:40-17:55 話題提供 15分 討論 60分 |
[討論] 大学におけるソフトウェア管理の現状と包括ライセンス契約の考え方 −利用調査、学内合意、攻めの対策・・・ センターが今、なすべきことは何か?− 話題提供 ・包括契約を利用する立場から 大阪工業大学 中西 通雄 ・包括契約に慎重な立場から 熊本大学 宇佐川 毅 |
17:55-18:05 |
休憩 −アンケート記入、お帰りになられる方のための時間− |
18:05-19:30 |
懇親会(会費 \500)
お飲み物とおつまみをご用意して、引き続き「討論」を行います。
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(18:50-19:00) |
[閉会あいさつ(中締め)] 中西 通雄 (大阪工業大学) |