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以下は、2013年6月、科学技術計算分科会および幹事会で内容確認のうえ、村上会長名で意見提出したものです。(パブリックコメント募集ページ

「今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ中間報告(案)」へのパブリックコメント

2013年6月12日
サイエンティフィック・システム研究会 村上和彰

(サイエンティフィック・システム研究会(SS研)において、村上和彰(会長)を中心に作成したコメントを以下に提出する。なお、SS研では幅広い会員が多様な意見を持っておりその全てを集約したものではない。)

○全体
  • 世界トップレベルのスパコンを保有し活用していくことは、科学技術計算分野だけでなく産業全般において日本の国際競争力向上のために必要不可欠な基盤である。国による戦略的・継続的なシステム開発・整備、アプリケーションやシステムの研究者・開発者の連携によるプロセッサ含めたシステム開発、具体的なニーズを踏まえての国際連携も視野に入れたソフトウェア開発、人材育成にも戦略的に取り組むことが急務である。
  • 学術研究、産業全般において他国に先んじるためには、幅広い分野で活用できる高性能スパコンの整備は必須。グランドデザインでスパコン整備に関する戦略を明確化し、各機関の意向を尊重しながら日本全体のスパコンの中長期的な整備計画を早急に策定するべき。
  • 一方で、ユーザ視点でのHPC利用環境の使用感、利便性、生産性の向上が必須である。欧米ではクラウド環境においてHPCを実施する「HPC in the Cloud」や、複数のスパコンセンターの計算機資源やアプリケーション、データ等を共用するXSEDE、等の取り組みが進んでいる。我が国でもTCクラウド、wCloud、等、同様の試みが民間レベルで始まっているが、国レベルでも「京」、ポスト「京」、各センターのスパコンを原資とした同様の取り組みを検討すべきであると考える。
○ポスト「京」で再び世界一を目指す意義
  • トップのマシンを持つことで世界に先行する発見・開発・成果が得られる。トップになること自体が目標なのではなく、そこから派生する世界初・世界最高の成果が重要で、これを実現するための世界一である。
  • 科学技術の世界において、世界初、世界最大・最小・最高などを実現することは、科学技術中心の現代社会では新たな領域を切り開いていくという極めて大きな意味がある。2番手3番手ではダメなのは、ノーベル賞をはじめとする賞や名誉がそれらには決して与えられないことからも明らか。世界の科学者、技術者の誰もが世界初、世界一を目指して鎬を削っている。特に資源の少ない日本では、科学技術で他国に先んじることが生きていく道と言える。スパコン開発やその利用技術は、我が国が世界一を狙える、あるいは世界を牽引できる数少ない分野であり、日本のスパコン技術が名実ともに世界一となるためにはポスト「京」でも再び世界一を目指すべきである。
  • 世界に対して勝つという意味で「京」の100倍程度の計算性能を目標とするのが妥当ではないか。
○研究開発の方向性
  • スパコンはアプリケーションで成果を出すためのツールである。アプリの開発者・利用者がシステム開発者と緊密に情報交換、議論できる場を醸成する取組みを行い、より高度な成果が創出されることを期待する。特にプロセッサはスパコンの中枢部分であり国内での開発が必須と考える。アプリケーションの効率的・効果的な実行にはプロセッサの詳細情報が必要であり、アプリケーションからプロセッサの設計へのフィードバックも重要である。
  • ソフトウェアについては、国内での開発はもとより、標準化・普及の観点から、国際協力も重要である。アプリについては、利用・普及の観点から、具体的なユーザニーズを取り込んで開発するスキームを構築することが重要である。
  • 計算結果の妥当性の確認やその先の応用まで、「京」を使った成果の創出には時間がかかる。税金を使って真に社会の役立つ成果を出していくには、ポスト「京」は現在の「京」と技術的あるいは業務上の連続性・継続性が必要である。単に性能・革新を追及するのではなく、技術的な連続性を担保し利用者負担を少なくする必要がある。
○国産技術の発展
  • ポスト「京」は国産技術に基づくものでなければならない。日本のスパコン技術が世界で認められているのは国産技術によるためである。もちろん全ての技術・部品を国産で賄うことは不可能だが、「数値風洞」、「CPPACS」、「地球シミュレータ」、「京」と、世界一を獲得したスパコンには全て何らかの形で日本独自の技術が盛り込まれている。国産であるという糧は、利用者にも良い影響を及ぼし、我が国独自の新しい利用技術・アプリケーションが生み出され、新たな計算機への要望・開発へと繋がる。この正のスパイラルこそが今日の我が国のスパコン技術の源泉であり、米国の計算機技術の波に飲み込まれることなく対抗できている大きな理由である。自前で作らず買ってくれば安くできるという意見もあるが、上記の観点から、国産技術の発展を目指すことが重要であろう。
○人材育成など
  • 世界に対する優位性を確保するためにはスパコンの開発から利用までの流れを太くし、人材の層を厚くすることが大切。スパコンはその牽引役として適切。
  • 計算科学・計算機科学の両方を理解し総合的に推進できる人材が必要。評価制度も含めた長期的観点での検討が必要。
  • ソフトウェアも含めたスパコン分野全体の開発・整備計画を明示した上で、それに沿った具体的な人材育成プランの策定を期待する。
  • HPCI計画を中心に、産官学一体で日本の科学技術や産業の発展を推し進めていくには、国民の共感や盛り上がりも重要な要素である。国民総意での計画となるような手立ても検討されることを希望する。

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