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2007年度合同分科会 「ICT社会を支える人"財"像」 特別講演

高度情報通信人材育成に向けて
−産学官連携による九州大学QITOプログラムの取組−


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写真_福田氏

九州大学大学院システム情報科学研究院
教授 福田 晃

 
アブストラクト
 情報通信分野においては、企業が欲する人材と、大学が育成し企業に送り出す人材との間に大きなギャップがあることが叫ばれている。このギャップを埋めるためには、何が必要で、大学でどのような教育が必要かなど、現在、九州大学が取り組んでいる産学官連携の高度情報通信人材育成プログラム(QITOプログラム)について、紹介する。
キーワード
高度情報通信人材、実践的教育、人間力、コミュニケーション能力、PBL(Project Based Learning)、産学官連携
 



     ICT(Information and Communication Technology)は社会基盤を支える技術としてその重要性を増しており、急激な速度で進歩している。また、産業界ではわが国の情報技術産業をリードすべき高度ICT人材の不足が指摘されており、ビジネスや開発拠点のグローバル化、インドや中国等の新興国の台頭が進む中で如何に日本の競争力を維持していくかが大きな課題となっている。一方、大学におけるこれまでの教育は基礎理論や要素技術に主に重点が置かれており、ICT産業において期待される人材像との間には従来大きな隔たりがあることが指摘されている。このような状況の中でわが国のICT産業の競争力を将来にわたって維持していくためには、産学連携による世界に通用する高度ICT人材の育成が最重要課題となっている。九州大学大学院システム情報科学府(以下、本学府)では平成17年、上に述べた問題認識と社会的要請を踏まえたうえで、新しい修士課程教育コースの検討を開始した。
     また、我々の問題意識及び検討開始と時期を同じくして、日本経済団体連合会(以下、経団連)では、平成17年6月に「産学連携による高度な情報通信人材の育成強化に向けて」と題する提言を発表し、高度人材教育の必要性を説き、大学教育に関して産業界から協力する意向を示した。さらに、平成18年5月に重点協力拠点2校、協力拠点7校を選定し、産業界を挙げてこれらの大学を支援していくことを決定した。さらに、文部科学省では,大学の高度IT教育を支援するために、平成18年度から「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」を開始した。九州大学は、経団連の「重点協力拠点」と文部科学省の「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」(QITOプログラムと呼んでいる)の「育成推進拠点」の双方に応募し選定された。これを受けて本学府では産官学一体となった世界に通用する情報通信技術分野のトップ人材育成を目標として、情報系3専攻にまたがる新しい修士課程コースである「社会情報システム工学コース(以下、本コース)」を平成19年4月から開設した。
     本コースの特徴として、1)大規模な産学連携による修士課程教育コース、2)社会のニーズに合わせた実践的教育、3)経団連「高度情報通信人材育成部会」および協力企業による大規模で密な支援、4)連携大学との単位互換や教員の相互派遣、があげられる。従来から、わが国の大学においても産学連携の教育プログラムはいくつか実施されているが、このような大規模な支援体制に基づく産学連携の一貫した修士課程教育コースはあまり例をみず、極めて特徴的である。
     本講演では、本コースで今年から実施しているQITOプログラムについて、産学連携による教育、実施状況、及び半年を終わっての実績、効果、問題点、得られた知見などを述べる。

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