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2007年度合同分科会 「ICT社会を支える人"財"像」 研究教育環境分科会代表報告

学生を伸ばす主体性指向の自己成長型教育システム
−金沢工業大学の試み−


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写真_宮本氏

金沢工業大学 工学基礎教育センター
所長 宮本 紀男

 
アブストラクト
 社会が求める人財像と本学が育てようとする学生像について概括し、個々の学生が、各自の「資質」と「何に向いているのか」を自ら見つけ出し、どのような希望や目標を持って その「資質」を在学中にどう伸ばし「どのような自己実現」に結びつけるのか について学生自身が主体的に考え行動することを促すため、本学が試みている「主体性指向の自己成長型教育システム」の概要とそのための教育的仕掛けの幾つかについて概説し、さらにその成果の一端を紹介する。
キーワード
主体性指向、自己成長型教育、教育的仕掛け、人材像、教育付加価値、金沢工業大学
 



  1. はじめに 本学の概要
     建学の綱領:人間形成技術革新産学協同。教育目標:自ら考え行動する技術者の育成。開学:1965年4月。理事、教職員、学生が、行動規範を共有。学部:4学部(情報学部を含む)、14学科(2008年度より)、定員1480人/1学年、大学院:工学研究科(10専攻)、心理科学研究科(1専攻:臨床心理学専攻)、研究所11 (内、9研究所は私立大学学術高度化推進事業採択)、19研究センター(海外拠点3センターを含む)、米国他の海外提携校:17校、学生総数:7196人。教員数:328人、教授の56%が企業出身
     平成7年度より教育改革に着手。その後、継続的に改革を実施し、この間の改革の力点事項は、文部科学省の特色GP 3件、現代GP 6件、大学院教育改革支援GP 1件に採択されている。外部評価は、大学基準協会と高等教育評価機構の認証を得ると共にJABEEでは、5学系10学科の教育プログラムが認定を得ている。
     また、学生の「達成感」を重視した本学の改革の姿勢が評価されて「全国企業品質賞大賞」を受賞(2006)している。本学学生:全員パソコンを所有。特定の複数の能力軸に突出した高い潜在能力(伸ばすことにより、他流試合に十分通用するレベル)を持つ者多し。

  2. 主体性指向の自己成長型教育システムの狙いとその概要
     社会が求める人財像に整合する「学力」×「人間力(社会人基礎力を含む)」の高い学生を育てるべく、個々の学生が、「何に向いているのか」や「資質・能力」などを自ら見つけ出し、どのような「志」や「自己実現目標」に向けてその「資質・能力」を在学中にどう伸ばすのか について学生自身が「探求するテーマ」を主体的に設定するなど、「社会で自分を活かして生きていける自信」を獲得できるよう上記教育システムには、キャリア教育の要素を織り込んいる。
     さらに、個々の学生は、「150日を300日に」「知識から知恵を!」を標榜し、正課では、チームで仕事をする能力を鍛える「プロジェクトデザイン科目」と技術者向けの新教養教育と言える「技術者入門」「日本学」や「科学技術者倫理」を必修化して「行動を設計」することを学ぶ。また、課外学習用として、「夢考房」、「ライブラリーセンター(図書館)」、「工学基礎教育センター」を含む7つの教育支援センターを放牧的に活用できるようにしている。
     学生は、各自の学習と行動の成果や新しい出会いを通じて得たものを「達成度確認用を含む複数のポートフォリオシステム」を駆使し、行動の成果を記録してその内容を随時振り返り、達成感を味わいつつ次の行動設計に反映させる方式の「主体性指向で自己成長型の教育」(アクロノールプログラムと呼称)を実施している。また、正課と課外用の7つの教育支援センターは、大学とは独立した教育支援機構所属とし、各センターが、融合的、相乗的な教育効果を発揮できるよう教育支援担当副学長を委員長とする委員会運営としている。

  3. 自己成長型教育により達成される教育付加価値の一端
     教育付加価値は、在学生については、入学以降の「自己成長度合い」と「達成感」で測られる。これらの一端を把握するため、在学生、教職員、卒業生、企業を対象に本学独自の「総合アンケート」を実施してPDCAを回している。なお、修了・卒業予定者については、就職実績が最も厳しい第3者評価の1つと見做される。本学は、厳寒超氷河期といわれた時期にも99.7%の内定率と高い上場・大手企業内定率を達成している。今後もPDCAを回しつつ教育付加価値の向上と自己成長型教育の一層の実質化を目指したいと考えている。

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