[目次]

会長挨拶




会長:金澤 正憲(京都大学学術情報メディアセンター)


     おはようございます。ただいまご紹介いただきました金澤です。
     毎年行っております合同分科会、今年は久しぶりに京都で開催することになり した。遠くまで多くの方々にお越しいただきありがとうございます。

     実質的には昨日の夕方の懇談会より始まり、今日、明日と、二泊三日と長時間 の会合となります。この合同分科会の企画委員の先生方におかれましては長い間、議論に議論を重ねて、プログラムを作成していただきました。
     今回のテーマは、「次世代のIT社会を予想する」という、非常に難しい題目になっていると思います。
     私が学生の頃に、よく読んだ本に寺田寅彦という随筆家の作品があります。参加者の中には、東京大学の方もたくさんおられますので、皆さんの方がよくご存知かと思いますが、彼は東京大学の物理学の教授をしておりました。彼は第五高等学校の田丸先生の授業に感銘を受けて物理学を始めたと言われております。一方、その第五高等学校で、夏目金之助、作家の名前で言うならば夏目漱石に出会って、自然の美しさを見ることを教えられたということです。彼は、随筆家で有名なのですが、漱石に習ったのは俳句的な事だったと言われております。
     寺田寅彦は日常の自然を素直に見る、観察するということを心がけておりました。皆さんよくご存知の線香花火がなぜ松の葉みたいになるのか、それは鉄分が関係しているとか、あるいは飛行船の爆破事故原因は、船体に塗られたのアルミ粒子の放電で洩れた水素に引火して爆発するらしいとか、山手線で最初5分間隔毎に電車を走らせても、ちょっとした狂いによって、その間に到着する人間の数が増え、その後の電車とはどんどん間隔が縮まって、そのうち団子運転になってしまうなどの日常の自然を見て、それを実験とか理論でまとめていった人だと思います。

     今回の「次世代のIT社会を予想する」というテーマについても、私としては、将来のIT社会がどのようであるかということを見る際に、そのように自然の目で、決して、技術があまりにも進んでいるということを前提にせず、我々はまだ技術が足りないという謙虚な気持ちで、この合同分科会を迎えたいと思っております。それに対し、十分ないろいろな示唆を与えてもらえるような講演がたくさんあると思っております。先ほど申し上げました、寺田寅彦は、海洋講習所だとか、東大の航空研究所、地震研等の我々と関連するいろいろな施設を設立するときに関与されていたと記憶しております。

     最初に申し上げましたように、二泊三日の長丁場ですが、皆さんが新しい知見を得られてお帰りになられるとしたら、この合同分科会の意義が非常に大きいものだと思いますし、期待しております。少し挨拶が長くなりましたが、私の開会のご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)



[目次]

All Rights Reserved, Copyright©サイエンティフィック・システム研究会 2006